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海外資産運用術 PBか、PPBか

PBか、PPBか

ここ数年、日本では「フィナンシャルプランニング」や「投資」が脚光を浴びています。金融不安の高まりから、ゼロ金利政策が続けられた結果、資産運用にこれまで無関心だった日本人も、自己の資産形成と運用について積極的に考えるようになったのです。海外の大手金融機関が、高格付けで健全な財務を維持しながら、高い利率を提供しているという情報がメディアを通じ流れてきます。しかし、昨今のインターネットの普及に伴い、一部では情報の供給過多に陥っている可能性も否めません。

実際に海外に目を向けるとあまりにも多くの情報が溢れていて戸惑ってしまう、と言う声をよく耳にします。更に、数え切れない運用商品の中で、自分に適した商品は何なのだろうかという壁にもぶつかります。いったいどのようにして安全な金融機関を選択すればよいのでしょうか。実は、これらの問題を抱えるのは日本人だけではなく、世界中の富裕層に共通した問題なのです。欧米では、独立系のインターナショナル・フィナンシャル・コンサルタントがこれらの問題の解決に力を発揮します。フィナンシャル・コンサルタントは、個人個人独特のニーズに合った資産管理・運用手法を、グローバルな視点から選択し、顧客の利益を目的とした運用コンサルティングを行っているのです。

日本では保全を、欧米では運用を中心に考えるファイナンシャル・コンサルタント

しかし日本では、大半のフィナンシャル・プランナーが、専ら資産の保全という側面に注目するために、往々にして遺産相続に重点を置いた保険商品の紹介をしがちです。勿論、欧米のフィナンシャル・コンサルタントにとっても、保全は重要な課題となっています。しかしれ以上に重要なのは先ず、顧客が希望通りの人生を全うするために必要且つ十分な資産を準備するには、どれだけの余剰資金を生み出す必要があるのか、ということなのです。そのうえで安全性を重視した投資のコンサルティングを行っているのです。従って、欧米のフィナンシャル・コンサルタントの仕事とは『人生を楽しみながら送るために必要なマネープランニングのお手伝いをする』ことなのです。

ご存知のように、プライベートバンクは超富裕層向けにハイレベルなサービスを展開しています。銀行、証券の役割等を全て一つ口座で包括的にカバーし、資産継承、離婚や死亡した際の資産譲渡に関し、遺言書の作成、管理などの相続対策、節税のための税金対策も踏まえた総合的なサービスを提供しています。名高いプライベートバンクの多くが外国に店舗を構えていますが、通常、そのほとんどが世界の低税率地域に拠点を持っています。こうしてプライベートバンクは、その運用商品の種類の豊富さ、高い利回り、資産保全、秘匿性、租税回避に惹かれた世界中の超富裕層に支持されているのです。

しかし、一般企業と同様に、プライベートバンクにもまた各行ごとの営業方針があります。自行の営業方針を優先した営業を行うことが無いとは言えません。自行にとって利益率の高い、自社運用の投資商品を推奨する場合もあるのです。こうしたサービスを受ける顧客が、「この担当者が勧める商品は、私にとって本当に最適なものなのだろうか。それとも・・・」という疑問を抱くことがあるかもしれません。こういったことから、顧客の利益を第一に考える担当者ほどプライベートバンクを去ってしまう、というケースが後を絶たないのです。

プライベートバンクと同様のサービスを期待できるPPB

コストの面からプライベートバンクは、決して効率がいいとは言えません。プライベートバンクの手数料は、預入資産額の2~3%が主流となっています。例えば500万ドルで開設したポートフォリオの場合、初年度の手数料を2%とすると年間10万ドルになります。ある期間の運用の結果、評価額が2倍の1千万ドルになったとすると、年間手数料も2倍の20万ドルに上ります。さらに投資の際にはファンドの購入手数料がかかってきます。新しくファンドを購入するごとに、口座保持手数料の他に、別途購入手数料を、銀行に支払うことになるのです。

では、プライベートバンクに代わるものは無いのでしょうか。プライベートバンクのサービスの仕組みは、資産を安全に保管し、適切に事務処理を遂行するカストディ口座(資産保管口座)と、リレーションシップ・マネージャーと呼ばれる、運用コンサルティング行う顧客担当者とで成り立っています。

実は、プライベートバンクよりも低いコストで、全く同じ資産管理機能を有する口座があるのです。専任の担当者が運用コンサルティングを行い、カストディ口座に証券等を保管していく点で、その仕組みも同じです。プライベートバンクだけが、このカストディ口座を提供しているわけではないのです。大手生命保険会社や、世界的規模の投資会社なども、プライベートバンクより低コストでカストディ口座を提供しているのです。

質の高いサービスを期待できるプライベートバンクの利用には、それなりのコストは覚悟しなければなりません。また、カストディ口座を開設できるのは、最低預入資金1百万ドル以上が主流です。しかし、これまで述べてきたPPB(プライベート・ポートフォリオ・ボンド)というカストディ口座を利用することで、費用が半分かそれ以下になることもあるのです。これら専任の担当者のコンサルティングを仰ぎながら運用できる機能を持ったカストディ口座か、プライベートバンクか,という選択肢をどのように使い分けていけば良いのか、次回から更に詳しく説明していくことにします。

プライベートバンクに替わるサービスとは?

ラップ口座とは

前回、簡単にプライベートバンクを利用して投資した際の問題点を考えてみました。        今回は、プライベートバンクに代わる選択肢の利点についてより詳しくお話ししていきましょう。 プライベートバンクの代替として、海外生命保険会社によるPPB(プライベート・ポートフォリオ・ボンド)と呼ばれるラップ口座が挙げられます。PPBと区別されることもありますが、ここでは同じと いう前提で進めさせていただきます。

ラップ口座とは、ラップする(包む)という意味で、資産運用に関するあらゆるサービスを包括した 総合口座です。通常有価証券の売買、保管などを行うと、個々に手数料が課されますが、ラップ口座は資産残高に応じ、手数料が掛かります。 日本では、1998年に証券会社が投資顧問業務を兼務できるようになったことを受け、ラップ口座  サービスが始まりました。実際には様々な規制があり、投資家には浸透しませんでした。しかし、2004年4月証券取引法改正により、ラップ口座に関する規制が緩和されると、日本の証券会社は  本格的にラップ口座サービスを展開し始めました。現在、各証券会社は保有ラップ口座数の拡大を  競っています。このラップ口座に組み込める商品は、日本の金融庁に登録されている限られた金融商品のみであり、これからご紹介するPPBは海外(オフショア)のものですので、性質が異なります。  PPBは時としてポートフォリオ・アカウント、またはカストディ口座という言葉で表現されることも あります。

高い安全性を誇る海外生保のPPB

では、海外生命保険会社が提供するPPBの仕組みを簡単に説明しましょう。PPBの提供は海外生命保険会社ですが、投資運用商品として扱われており、保険の加入とは異なります。投資はPPB口座を   保有している会社名義で行われることになります。 投資家は自分で運用の指示を出すこともできますし、コンサルタントのコンサルティングに基づき運用内容を決定していくことも、一任勘定(顧客が有価証券の売買を第三者機関に一任する方式で運用すること)で運用することもできます。

PPB口座内には、一定の基準を満たした世界中の株式、債券、ミューチャルファンド、ヘッジファンド、現金を保有できます。数種の投資商品を一つの口座で管理することにより、事務手続きが簡素化する上、ポートフォリオ・ボンドという一口座から、分散投資を行うことが可能になるのです。    また口座内に保有している資産が、一つのレポートとして発行されるので、資産運用の管理がしやすいというメリットがあります。弊社がご紹介するPPBは、格付けのしっかりした金融機関を通すため  高い安全性が提供されています。さらに、登記地の政府により契約者保護口座内の保有資産全体の  最高90%まで保証するというPPBもあります。

PPB口座保有者は、リレーションシップ・マネージャー、もしくはフィナンシャル・コンサルタント およびコンサルタント会社と連絡を取り、PPBを利用していきます。PPBは相続の問題に関しても  非常に有効的です。相続対策には、オフショアのポートフォリオ・ボンドとトラストを組み合わせ  合理的に速やかに資産継承を行うことができます。良いコンサルタントは、この口座を活用するに  あたり、今後6ヶ月間はどのファンドへの投資が有効というような短期的なトレンドを捉えた投資の コンサルティングは行いません。長期投資による資産運用の包括的計画のツールとして、この口座を 利用するため、顧客と同じ立場に立って大きく全体像を考察する必要があります。

プロフェッショナルなリレーションシップ・マネージャーやフィナンシャル・コンサルタントを持つ 本当のメリットは、様々なフィナンシャルプランニングや人生目標、ニーズに合わせた提案を得られるということです。不動産等の購入費、教育資金、老後資金作成など、顧客の希望が、資産形成段階と、老後もしくはその後の段階の両方に沿うよう考慮してくれます。

相続にも有効なPPBの利点

相続対策の利点としては、遺言と同様の働きをするトラストという仕組みを利用することにより、煩雑な手続きを経ずに、速やかに、誰にどのくらい資産を受け渡すか指定することができるということです。(遺言とは、法的なプロセスを経て、誰が資産を保有する権利を持つか決定するものです。通常、遺産整理には、数ヶ月から数年かかります。必要書類を用意するのにも時間がかかります。)遺言や トラストを設定していない場合、大切な方を失われ、悲嘆に暮れている時に、このような問題に直面する煩わしさがあります。

PPBに付属できるトラスト機能

資産継承において、トラストは重要な役割を果たします。口座名義人にご不幸があった際には、予め任命されたトラスティー(受託者、保管人)と呼ばれる第三者または資産管理会社が、名義人の希望に従い施行することを請け合います。生存中に作成されたトラストは、ニーズや環境の変化に沿って何度でも調整可能です。例えば、子供が教育費として使用するのであれば、遺産の一定割合のみを受取れるように計らいたいと名義人が望めば、その旨をトラストに明記し、基金を開放する前に、トラスティーが名義人の希望に適っているか確認し、施行することになります。または、切手やコインの完璧なコレクションを、それをいつも眺めるのが好きだった孫に渡したい・・・など。詳細はあなたの望みに沿ってオーダーメイドできるのです。また前もって何をどのくらい誰に渡るようにするか詳細に指定しておくことで、トラスティーは速やかにトラストを執行することができます。ご遺族にとっても、手間と時間が省け、感謝されることでしょう。

PPB経由で投資をするメリット

また、法律事務所が提供するトラストサービスを利用するには、トラスト作成時の費用に加え    数千ドルもの年間手数料が施行されるまでの間かかります。一方、PPBにトラスト機能を付随させる には簡単な手続きのみで作成費、管理費はかかりません。

さらに、PPBを利用することは、トラストが施行されるまでの年間管理手数料が低くなるばかりではなく、投資商品を売買する際の手数料を軽減することも可能です。多くのファンド会社が、個人投資家に対し、ファンド購入時に5%の初期手数料を課しますが、機関投資家が投資をする際には、投資する 金額が大きいため、個人投資家よりも低い初期手数料が適用されています。PPB経由で投資商品を  購入することで、この機関投資家向けのディスカウントが個人投資家にも適用されます。

PPBと専任のリレーションシップ・マネージャーもしくはフィナンシャル・コンサルタント、コンサルタント会社を一組持つということは、コンサルタントからの偏見のないコンサルティングにより   有益なオフショア投資を可能とし、最大限にその利益を享受できるのです。

このように、より有利な投資を求めて、海外投資に関心を抱かれる方が増えております。      中にはオフショアでの銀行開設を視野に入れる方もいらっしゃるようです。            次回は、オフショアバンクのメリット、デメリットについてお話していきましょう。

オフショア(OFFSHORE)の意味とは?

オフショアバンクとは、富裕層や著名人のためのものなのでしょうか。それとも、誰もが口座を開設し、資金の預け入れを検討すべきものなのでしょうか。

まず、オフショア(offshore)の定義から考えて見ましょう。

オフショアの意味とは、“Off”「離れて」の意味に“Shore”「沖」で、沖合つまり海外を意味します。オフショア地域には、“Tax Haven” (租税回避地)とも呼ばれ、税制上の優遇を受ける事のできる金融特別区があります。つまり、自国の産業・天然資源にも恵まれない小国・離島が、海外から産業を誘致する為、金融に対する合法的優遇措置を設定した“特別金融区”のことです。その代表としては、チャネル諸島や、ケイマン諸島等が挙げられます。金融優遇措置を受ける為に、その様な地域に世界中の金融機関が支店を設立しています。

オフショア(offshore)に存在する銀行に様々な理由から、口座を開設し、資産を預ける方がいらっしゃいますが、実際には存在しない利点が得られると誤解されている方をよく見受けます。その共通する誤解とは、オフショアバンクの口座に資産を預けることで、納税義務から免れることができるというものや、海外へ直接投資する際にはオフショア銀行の口座開設をする必要があるなどという考えです。主に、これら二つの間違った動機から、オフショアバンクに口座を開設することを検討されているのではないでしょうか。

今現在の日本の法律では、日本在住の方は、どの国や地域に資金を保有しようとも、利息や利益を得ようとも、日本の税務署に対する報告義務がありますし、銀行の所在地がどこであれ、毎年得た利息分の税金は支払う義務があります。

海外直接投資にオフショア銀行は不要

また、もう一つの誤解とは、海外直接投資をするには、オフショア銀行で口座開設が必要だという考えです。この考えは誤りです。全ての投資家の方に必要なのは、直接投資資金を海外の運用会社のカストディアン口座に送金することです。つまり、日本の銀行口座から海外送金を行い、直接投資を行うことが可能ですので、必ずしもオフショア銀行に口座を保有する必要はありません。

そして、数年後に投資家の方が運用商品を売却するときには、運用会社がその解約金を直接世界中の投資家の銀行口座へ送金します。日本の銀行口座やオフショア銀行口座への送金も可能です。オフショア銀行口座を指定した場合、その後日本への銀行口座への送金は、ご投資家ご自身が、ご自分でそのオフショア口座から日本の銀行口座に振り込むように手配をとることになります。しかし、繰り返しになりますが、オフショアの銀行口座を利用しても、日本の投資家が納税義務を逃れられるということではありません。

最近では、フィナンシャル・コンサルタントや旅行会社でさえ、香港への銀行口座開設補助をオプションに含んだツアーを開き、集客しているようです。現に、香港のHSBCやCitibankでは、休日の定例行事のように日本人が時には数十人も口座開設のため列を成しているという話を銀行担当者から聞いております。この現象は、オフショア(海外)にお金を隠し、税金を払わなくても良いという考えで脱税を指南する人によって推進された噂がもたらしているのだと思います。これは、大きな間違いです。

オフショア銀行の真のメリットは保有資産の分散

税務署は脱税を発見する機会と見なし、最後には誤ったコンサルティングを聞いた投資家自身に違法を行った罪として、処罰が降りかかってくることになります。オフショア区域内では源泉徴収されないからと言っても、居住民に対して課税をする日本のような国の住民であれば、個人が自国での納税義務がなくなるということはないのです。アメリカ、ヨーロッパ、香港などに口座を保有することは、違法でも悪いことでもありません。問題なのは、海外口座や投資から得た利息や利益について税務署に報告をしないことなのです。投資資金を運用会社に送る前に、まず先にオフショア銀行の口座に送金し、文書足跡を少なくすれば、税務署は発見できないだろうという考えは、実に安直な考えだと言えるでしょう。

オフショア銀行に口座を開設する本当のメリットとは、保有資産を分散するという観点から日本国外に資産を保有する一手段であるという点です。世界中どこにいてもご自分のご資産にアクセスできるという利便性や、高い守秘性や安全性を保てるという点もまたメリットとして挙げられます。オフショア銀行は、日本国内の銀行で外貨を保有するよりも、高い利率を提供しています。オフショア銀行は、英語が使える方にとっては、とても使い勝手が良いものです。

インターネットバンキング、Eメール、FAXバンキング、テレフォンバンキングといった便利なサービスを受けることができる上、地元の銀行口座からお金を引き出すときと同じように、ATMから預金を引き出すことができます。電子送金を使用することにより、簡単で、迅速に世界中にお金を移動させることができ、世界中どこにいてもお持ちの銀行口座から直接資金を利用することができるのです。もし、旅行を頻繁にされる方でしたら、世界中どこにいても、ご自身の銀行口座に直接アクセスすることができるので、オフショア銀行口座は非常に便利なものとなるでしょう。

オフショア銀行で問題となる言葉の壁

しかし、オフショア銀行は、英語が使える方にとっては、使い勝手が良いものですが、残念ながら日本語での対応を行っているオフショア銀行はあまりありません。投資目的でオフショア銀行を開設することは、いかがなものでしょうか。もちろん、日本語で銀行業務のサービスを行っている銀行もありますが、今現在私が確認できているところでは、投資商品の説明を日本語で行っているオフショア銀行(プライベートバンクは除く)は皆無です。

国際投資で資産を増やそうと考える多くの日本のご投資家にとって、コミュニケーションをとるために必要な英語力が大きな壁になると思います。残念ながら、世界共通語は日本語ではなく、英語だということは否めません。銀行口座は第三者(フィナンシャル・コンサルタントも含む)へ口座情報を開示することはできません。せっかく海外で銀行口座を開設したけれども、活用できないというケースを多々見受けます。結局、投資に必要なのは、銀行口座ではなく投資用の口座なのです。

投資目的ならばカストディ口座が有意義

前回お話させていただいたように、プライベートバンクやポートフォリオ・アカウント、ラップ口座といったカストディ口座を用いて投資をする方が、より有意義でしょう。カストディ口座を通して、株式、債券、ミューチュアルファンド、ヘッジファンドやオルタナティブ投資をより有効的に国際的に行い、資産を増やし、必要時にそのカストディ口座より直接、日本の銀行口座に送金を行えば良いのです。

最後に、特筆すべき重要な点としては、バハマ、バミューダ、ケイマン諸島、香港、シンガポール、スイスといった有名なオフショア地域は、極めて安全な投資環境を提供しているということです。事実、世界の半分以上の資産と投資がオフショア金融センターで行われており、多くの有名企業が投資チャンスを求めてオフショアに集まってきています。

もちろん、投資ごとにご自身で常識的に判断し、評判の良い運用会社の商品を選択することは、重要ですが、国際投資に特化した経験豊かなフィナンシャル・コンサルタント、会計士、弁護士などに相談することも有効的な資産運用を行うための一つの手段です。

最近、ヘッジファンド業界の話題が新聞紙面をよく飾っています。海外のヘッジファンドに投資をするために、オフショア銀行口座を開設しようと考える方も多かったのではないでしょうか。次回は、ヘッジファンドについてお話していきましょう。

ヘッジファンドがますます身近になってきた

ヘッジファンドは、しばしばリスクが高く、危険で、しかも限られた富裕層のみを対象にしていると いう烙印をメディアに押されがちです。初めてヘッジファンドが世の中に登場した時は、おそらく  その通りだったかもしれませんが、現在では様変わりしています。ヘッジファンドより以前に    ミューチュアルファンドが登場した当時も、同じように認識されていました。ミューチュアルファンドが登場する1930年以前は、株式や債券を組み入れたポートフォリオ作成するには、多額の資金を 必要としていたため、ポートフォリオ運用は、「富裕層のゲーム」として捉えられていました。   しかし、ミューチュアルファンドの登場により、多くの投資家から投資資金を集め、まとめたお金を 一つのファンドとして、分散投資がすることが可能になりました。現在では、誰もが少額から簡単に 分散投資が行えます。

通常、ミューチュアルファンドは、ある一定のエリアや単一の投資内で頻繁に売買することを制限する厳しい規制があります。例えば、ファンド・マネージャーが翌日にマーケットが落ちることを察知しても、ファンド全体の5%までしか現金化することしかできず、他の投資資産の価格下落を見守るしか ありません。反対に、ある特定の会社の株価が急成長し2倍になる機会を察知しても、その株式に  ファンド資産の5%しか投資することができないのです。

また、一般的に、ミューチュアルファンドは、投資の情報公開が求められますし、ショート、レバレッジ、一極集中投資、デリバティブなどの手法を用いることを禁じられています。つまり、ミューチュアルファンドは、利益を上げる可能性を規制により制限される一方で、ファンド・マネージャーの誤った判断による運用リスクを低減することも可能なのです。

ローリスクからハイリスクまで揃う

一方、ヘッジファンドは、ミューチュアルファンドより柔軟性に富んだ運用手法が用いられているので、ショートポジションを取ることもできますし、先物、ワラント、オプションといった金融デリバティブも用いることができます。従って、ヘッジファンドは、より利益を生み出す機会に恵まれ、どんなマーケット状況でも利益を出すことを可能にしているのです。最近では、ローリスクのものから   投機性の高いハイリスクものまで、様々なヘッジファンドがあります。ファンド・マネージャーが  一つの株式や、コモディティ、債券、通貨トレードに集中的にファンド資産の大部分を投資するような非常に積極的なファンドがある一方で、ローリスクのヘッジファンド・マネージャーは、厳しい規制の下、ファンドが適正にリスクヘッジされているか入念に管理しながら運用しています。前者のような ハイリスクのヘッジファンドが、まさにメディアが警告するタイプのヘッジファンドであり、一晩で 時価が半分になってしまうこともあるので、心臓の弱い方にはお勧めできないファンドです。一般的に好まれるのは、月平均1%近くの上昇リターンで、下落月でも0.2%程度しか下落しないというような ヘッジファンドです。マイナス運用で取引を終える月数が少なく、継続的に上昇するファンドが   理想的ではないでしょうか。このようなパフォーマンスが継続し、年平均利回り10%超で複利運用が 行えれば、7年程で投資元本が倍になるのです。

リスクを理解し、最小限にするのが重要

1990年代には、全世界でわずか数百社、運用総額2~3000億円程度であったヘッジファンド業界が、現在では1万を超える運用会社が数百兆円を運用するまでに、ヘッジファンド業界は急成長しました。それに伴い、ファンド会社が倫理に反する非合法的な市場操作を行わないように監視する体制  機関投資家、個人投資家に対し、リスク情報公開をするなどの規制が強化されてきました。このようなリスク情報公開は、非常に好ましいことだと思います。特に、個人投資家にとっては、状況が悪化した時に全ての投資が総崩れしないよう、リスクを考慮し理解を深めるために重要だからです。人生において、リスクは常に存在します。だからこそ、そのリスクを理解することが、リスクを管理し最小限に 抑えることに繋がるのです。

また、ヘッジファンドの高いパフォーマンスは、投資の柔軟性に加え、パフォーマンスに応じた   ファンド・マネージャーへのインセンティブ(成功報酬)にも由来しています。大半のミューチュアルファンド・マネージャーと異なり、ヘッジファンド・マネージャーは、通常、そのファンドに影響力を及ぼすほどの多額の自己資金を投資し、投資家とリスクを共有しながら運用して、報酬を得ます。ミューチュアルファンドが、パフォーマンスによってではなく、運用資産額に応じてファンド・マネージャーに報酬を支払うのに対し、「インセンティブ・フィー」は、利益が上がったときにだけ、ヘッジファンド・マネージャーを報いるために支払われるのです。パフォーマンスに重点を置いたインセンティブ・フィーの構造は、ウォール街の多くのトップ・プレーヤーを魅了し、金融業界のエリート達を続々とヘッジファンド業界へ送り出してきました。 全てではありませんが、ほとんどのヘッジファンドが、マーケット下落時に対するリスクヘッジをする戦略をとった運用を行っています。ヘッジファンドの 手法は以下のような種類に分類されます。

ロング・ショート

ヘッジファンドの手法の中で最も多く使われている手法です。株式を買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)の両方のポジションを取ります。株価がその企業の業績を反映せずに高騰していると判断した場合、その株式についてはショート(売り持ち)のポジションを取ります。反対に、その株式が企業の業績と比べ、過小評価されていると判断した場合、その銘柄については買い持ち(ロング)の  ポジションを取ります。

裁定取引(アービトラージ)

同一の銘柄が、複数のマーケットで取引されている場合、同じ銘柄であったとしても、価格にズレが 生じることがあります。このような場合、最終的には必ず価格のズレが修正されるため、高いほうを 売って、安いほうを買っておき、価格が修正された時点で反対売買を行うことで、ある意味リスク  フリーで確実に利益を出すことができます。

イベント・ドリブン

この手法は、主に企業の買収・合併や社長交代等の「イベント」を利用して利益を上げる運用スタイルです。例えば、企業の買収・合併のイベントが発表されてから、実際にディールが成立するまでの間の株価の収斂を利用して利益を上げる機会が生まれます。しかしながら、ディールが不成立に終わった 場合は、多額の損失につながる場合もあります。

グローバル・マクロ

グローバル・マクロは運用手法を指すものではなく、世界中の市場において、ありとあらゆる商品を あらゆる手法を用いて運用するスタイルのことを指します。その多くは世界経済の変化、歪みから利益を得るために多種多様のポジションを取っています。典型的な例としては、金利変動による為替、株式、債券市場への影響を及ぼす政府政策の変更などに着目して、利益を上げる運用スタイルです。この手法を用いて、ジョージ・ソロス率いるクォンタム・ファンドが、1992年に英国中央銀行を打ち負かして莫大な利益を上げた事は有名です。

マーケット・ニュートラル

この手法はマーケットの価格変動からポートフォリオを保護するために、ほぼ同額のショートとロングのポジションを取ります。割安と判断した株式をロング、割高と判断した株式をショートして、割安と割高の状態が解消される過程で収益を狙います。

ディストレスト

経営環境が悪化して倒産に直面している会社、または破綻した会社の証券を投資対象とする戦略です。

ローリスクで変動率低い

ヘッジファンドは全て変動率が高いと、誤解されていらっしゃる方をよく拝見します。もし、グローバル・マクロ・ストラテジーをとり、レバレッジをたくさんかけながら、多額の資金を市場の一定向に賭け、株式、為替、債券、商品、金などに投資したとすると、確かに変動率は非常に高くなります。しかし、現実にはグローバル・マクロを用いたファンドはヘッジファンド全体の5%以下です。大半のヘッジファンドが、ヘッジのためにだけにデリバティブを使うか、全く使用していないかですし、レバレッジをかけていないファンドも多いのが現状です。

ほとんどのヘッジファンドのストラテジーが、特にレラティブ・バリュー・ストラテジーの場合は  一般的に100%マーケットリスクにさらされているミューチュアルファンドや伝統的な株式投資と 異なり、債券や株式市場の変動にあまり左右されません。

一定期間を超えるヘッジファンド投資のリターンは、株式よりも低い変動率、ローリスクの上、通常の株式や債券のインデックスより上回ります。ヘッジファンドへの投資は、スイスのプライベートバンクを始め、見識のある投資家に好まれています。今では、世界中の年金基金の多くが、ヘッジファンドへ投資しています。

次回は、欧米では一般的な運用商品でありながら、日本人投資家には馴染みが薄いランドバンキングについてお話していきましょう。

フィナンシャル・プランニング-将来設計をする

ファイナンシャル・プランニングをするということ

生涯のある地点で、フィナンシャル・プランニングをすることは、誰にとっても重要なことです。  子供の教育資金、老後資金、不動産購入、次の世代へ資産を継承する相続対策のため、目標を成就  しないまま終わってしまうことのないよう、目的に関わらず出来るだけ早く取り組む必要があります。ライフイベントにいくらかかるのかを試算しようにも、状況によって変化するため考えるのが面倒で とても大事なライフイベントの計画を立てることを後回しにしがちな方がほとんどです。      インフレや地政学的問題などの変動要因や、退職後の場合にはどれだけ生きられるのか、どれだけ働けるのか、企業年金や国民年金は十分なほど支給されるのだろうかということも計画を立てる際に   考慮しなくてはなりません。

では私たちは、退職時に一体いくらぐらい必要なのでしょうか。この問いに答えるのは簡単では   ありません。全員に該当する公式がないからです。一世代前までは、もう少し単純だったように   思います。生活スタイルも大差なく、福利厚生も安定していましたし、受けられる医療技術も限られていました。

現在では、寿命が延び、経済やテクノロジーも発達し、目まぐるしく変化しています。各個人が退職後の生活の計画をし、これまで以上に増す出費に備えなくてはなりません。早く退職後の計画を始める ほど、より多く資金が用意できるので、20年、30年と続く退職後の生活が豊かになることでしょう。

希望や目標を明確にし、今後を分析

フィナンシャル・プランニングを始める第一のプロセスとしては、まず、自分自身の希望や目標を明確にすることです。

どのように、どこで将来的に生活をしたいのか。ずっとしたいと思っていたけれど、忙しくて出来なかったことはないのか。何が自分にとっての幸せなのか。配偶者も同じ考えをもっているのか、どのようにこのような問題に対して考えているのか。もちろん、このような問いの答えは、人それぞれです。 田舎で暮らしたい、都市部で暮らしたい、一年の一定期間を外国で暮らしたい、もしくはハワイ、  タイ、ヨーロッパで海外移住したいなど。こういった質問を自問することは、あなたの人生にとって 何が重要かを気づかせてくれるでしょう。

第二に、経済的にどういう状況にいて、退職後の活動資金をどう蓄え、目標金額に達するには    どうすれば良いのかを分析をすることです。

退職後の生活に必要な経費を十分確保すると同時に、現在の生活の収支バランスを見直さなくては  なりません。現在の住宅費用、保険料、食費、医療費、生活経費、旅費、車の維持費など、様々な支出を加算します。子供を持たないかもしれないから、退職後は気ままにたくさん旅行に行くようになるかもしれない。現在の社会保障制度は崩壊してしまうだろうから、医療費は著しく増大している可能性もあるので、その分も忘れずに加味しようなど。こうして、将来かかる費用を考えたら、年間いくらぐらい必要になるか想定することができます。退職後、収入がなくなった上で、どのようにこの費用を捻出していきますか。

退職後の資金準備の重要性

このように、現在の状態を基に、いつ退職するか考え、状況が変化した場合も考慮しながら、退職年齢を仮定し、どのようにすれば、このような費用を年収から捻出していくことが可能かプランニングする必要があることは明らかです。

医療技術の進歩により、人々はより長生きするようになりました。つまりさらに数年余分に考慮して 計画する必要があるということです。寿命が延びるに従い、高齢化が(特に日本は)進み、支払う人が少なくなり、引き出す人が増えてしまうと、年金システムは、これまで以上にひずみを生じます。  社会年金から得られる利益は、総支払額の80%までと控えめに計算しておくと得策でしょう。これに 加え、年率2%のインフレがあると言われていますが、上昇する穀物やエネルギーなどのコモディティと早い速度で上昇する人件費を考慮して、インフレ率を3%と考えておくと、より安心でしょう。

退職後に必要となる金額を元に、資産運用の投資元本を計算します。分散投資をし、年平均5-8%の利益を期待することが可能です。例えば、ある投資家が退職時に年間3千万円の収入が必要だったとします。預金利率が5%としましょう。とすると、退職時には6億円の資金が必要になることになります。 さあ、これで退職後の資金を用意することがどれほど重要かお気づきになられたでしょう。

最後に目標に応じたフィナンシャル・プランニングの設計は、注意深く、専門家の助けを借りて行う べきです。様々な方法があるため、その人に合ったプランを練ることは容易ではありません。フィナンシャル・コンサルタントは、フィナンシャル・プランを具体化させ、実行に移す手助けをし、定期的に変化する情勢やライフプランに合わせて見直しを行います。

目標に合わせて計画的に投資する

では、実際どのような手法を用いて目標資金を作成すれば良いのでしょうか。

積立投資を選択する人もいます。目標に合わせ、毎月一定額をミューチュアルファンドに投資していくのです。ドルコスト平均法のメリットが享受できるこの手法は、マーケット状況に関わらず効率よく投資が行えます。定期的に投資することで、日々変化する為替やファンド価格の動きに惑わされず、価格が平均化されるため、投資タイミングリスクを低減させ、投資期間の平均レートより低いレートでの ドル購入を可能にするのです。

インフレ上昇率にも追いつかない1%以下の利率で、銀行や郵便局に預金を眠らせておくよりも、もっと生産性のある金融商品を望む人もいます。

実際、インフレが年率3%で進行しているとしたら、毎年、お金の購買力が少なくとも2%ずつ減っているのです。安定的なミューチュアルファンド、ヘッジファンド、不動産へ投資をすれば、インフレをしのぐことも、安全、安定的に資産を増やすことも、何年も前もって熟考し適切に計画すれば難しいことではないのです。

将来のフィナンシャル・プランニングを怠り、漠然としたまま、企業や政府が年金を賄ってくれると 信じる時代は遠い過去の話です。この厳しい現実に自分自身で備えなくては、後にひどく後悔することになるでしょう。本当に用心深い方は、政府や企業が期待に答えられない場合に備え始めています。 自分の将来に関わる重要事項を、気まぐれな政府が取り組むようになるのを期待し、先延ばしには  していません。

老後資金を作成する良い対策は、高いリスクをとる必要はないのです。10-15年間かけ、極めて  保守的に、過度なリスクをとらず、年成長8-10%を期待できるポートフォリオを組むことです。  目標へ向け蓄えることがそれほど大きな負担にならないよう、できるだけ早く、フィナンシャル・プランニングを行い実行していくことは、将来いくら準備できるか決定する重要な要素です。

例えば、毎月26万円を30年間積立て、年間10%で継続して運用できると、約6億円の資金を  作成することが可能です。たとえ10年間しか退職までに期間がなかったとしても、毎月3百万円積み立てることができれば、6億円に達する計算ができます。

早く計画をし、実行に移すと、時間を味方につけることが可能になり、複利効果を享受できるのです。

ドルコスト平均法を知り、市場変動に対応する

市場変動をプラスに変える投資法

未来を見通せる力を持たず、確実に市場動向を読みきり、絶好な投資タイミングで株式やミューチュアル・ファンドなどへ投資することは、とても難しいことです。頼りにするものが他になければ、マーケットは上がり、下がるという市場原則に立ち返るべきでしょう。それでも予知できないことは、その 動きがいつ、どれくらい起こるかということです。この相場の上値と底値の判断の難しさが、多くの 人に投資が難しいと思わせる原因なのです。

上げ相場であっても下げ相場であっても、市場が動いたときに、現在保有中の金融商品を売却したり 新たに追加投資をしたりせずに、現在のポジションをそのまま持ち続けるということは困難です。  自分の将来の財政状況を懸念している場合は尚更です。見識のある投資家を含め、多くの投資家が  短期的な市場環境の変化に基づいて判断をしがちです。そして、この短期的観測に基づく判断は   潜在的な長期的リターンに大きな損害をもたらし得るのです。

上記のような相関性があるにもかかわらず、幸運にも、市場変動に遭遇しても冷静さを保ち、その  変動がプラスに働く投資運用方法があるのです。それを、ドルコスト平均法と言います。

ドルコスト平均法とは、継続的して一定金額を一定期間、例えば、月毎、四半期毎に投資する手法です。一口あたりの価格は上下しても、投資金額は変わらず一定なので、投資時の相場により、平均価格より高い価格で少ない数量を購入しているときもあれば、安い価格で大きな数量を購入しているときもあるのです。

ここが、この手法のポイントです。長期間に渡って一定金額を投資すると、価格が安いときには、より多くの口数を買い付けることができ、価格が高い時には、買い付ける口数が少なくなります。変動するマーケットでは、一定した株数やユニット数または、口数での投資ではなく、一定の金額で投資をすることで、一口当たりの平均買い付け価格が、同期間の平均価格より安くなることが可能となるのです。

ドルコスト平均法という手法

では、毎月100ドルずつ3ヶ月間継続的に投資したとしましょう。あなたが選択した運用商品は   当初、一口当たり10ドルだったとします。初めの月は、10口買えるということです。そして、翌月 マーケットが下落しました。悪いニュースでしょうか。いいえ、そうとは限りません。あなたが   前月に一口当たり10ドルで買った価格が、今では8ドルの価値になっていたとしてもです。あなたは まだ、継続的に毎月100ドルの投資をしていることを忘れないで下さい。価格が下落したおかげで  毎月投資する100ドルで、今回は12.5口買うことができたのです。そして、マーケットがリバウンド した時を想定してください。例えば、分かりやすく、3ヶ月目に回復したとしましょう。それぞれの 口数の価値は、今、10ドルです。3ヶ月目の投資で、あなたはまた10口買い付けることができました。つまり、合計32.5口保有していることになります。

今、どのようにこの手法が働くか見てみました。3ヶ月間であなたが投資した300ドルで32.5口買い 付けました。平均購入価格は、あなたが同時に投資したときよりも(一口10ドルで30口購入することになるので)安くなっています。3ヶ月間の一口当たりの平均価格は、1ヶ月目、一口10ドル、2ヶ月目8ドル、3ヶ月目10ドルですから、合計28ドル÷3ヶ月で、9.33ドルです。しかし、あなたの平均購入価格は、毎月100ドルずつ継続して投資しているので、3ヶ月間で総額300ドル÷32.5口ですので  ドルコスト平均法を使用した場合の購入価格は、前述よりも効率的に9.23ドルとなります。

これは、ファンドの口数・価格関係だけではなく、外国通貨で投資をするときの円・外国通貨の変動による為替リスクでも同じ原理が働きます。

ドルコスト平均法でリスクを軽減

また、ドルコスト平均法はリスクを軽減する役割も果たします。一度に一括で投資するよりも、マーケットが下落したときのリスクをとっているので、投資開始時に段階を踏んでハイリスクなマーケットに投資しているからです。この手法は、初期購入時よりもマーケットが上昇したとすれば、高いリターンを得る機会を失ってしまうことにもなりますが、マーケット下落時には衝撃を和らげるクッションにもなるのです。

ドルコスト平均法は、計画的な方法で積立運用を行いたい人には、良いアプローチ方法と言えるでしょう。そして、大事なのは、たとえ投資金額が少額だったとしても、自分が投資を継続して行えるだけの金銭力があるのか考慮することです。

積立投資は、一括投資の代替ではなく、また、一括投資よりも良いと勧めているわけではないという ことを、加えて述べたいと思います。ある程度、まとまった資金を銀行に預金として眠らせたまま  時間をかけて積立投資をしていくと、銀行に放置しておくよりも、もっと高い利益が得られるかもしれない機会を逃してしまう、投資遅延リスクの方が高くなるのです。適切なフィナンシャル・プランニングを行うために重要なのは、効率よく全てのお金を活用することです。一括投資は一括資金で、積立投資は、給料や賃貸収入投資の配当など入ってくる収入の一部から、低利息の銀行や郵貯銀行にまとまった資金を作成する間、何もせずに置いておく代わりに、有効的に資金運用をする為に、ドルコスト平均法を活かし、ミューチュアル・ファンドへ分散投資すると良いでしょう。

次回は、資産配分(アセット・アロケーション)について、少額を集中して高リスク商品に投資するのではなく、高い安全性を保ちながら、総括的なポートフォリオを通して高いリターンを得るように  どのように資産を配分すれば良いのか、お話していきましょう。

資産配分こそが、成功の重要な鍵となる

全ての金融資産に投資し、リスクを軽減

過去の株式市場を振り返ると、90年代後半や2003年から2007年半ばまでに見られたような上げ相場下では、誰がどのような商品、銘柄をポートフォリオに組み込んでも収益を上げることができました。しかし、最近の株式市場の変動には、多くの投資家が困惑しています。このまま株式市場は勢いを増し続けていくだろうと考えていた投資家も、含み損を抱え始め、これ以上損失が拡大しないように、資産を分散し、ポートフォリオ作成する重要性を再認識するようになりました。

アセット・アロケーション(資産配分)は、投資成功の重要な鍵を握っています。学術的研究、分析調査からも、投資結果を大きく決定づける要因であると証明されています。資産配分は、ポートフォリオの長期的なリターンとリスク低減に影響を及ぼします。個別有価証券の選定やマーケットタイミングなど、他の要因は、実は、包括的な投資リターンにおける影響のごく僅かな割合しか占めていません。しかし、残念なことに、この投資成功の決め手となる最も重要な鍵が、一番理解されていないのです。

では、資産配分とは一体何なのでしょうか?

資産配分と資産分散を混同されている方が多いようですが、これら二つは目的、方法など異なる手法です。類似する資産クラス内で、複数に分けて投資しようとした場合、同じ資産クラス内では分散投資先が限られてしまいます。例えば、テクノロジー株式に投資をしようと銘柄を選択し、五、六社の株式に投資したとしましょう。しかし、投資しているのは、全てテクノロジー産業内です。この場合、このうちの一社の株式が下落した場合にはリスク軽減になりますが、テクノロジー産業全体、もしくは株式市場全体がスランプに陥ってしまったらどうなるでしょうか。

資産配分とは、分散投資を超えて、全ての金融資産(現金、株式、債券、コモディティ、不動産、さらにはベンチャーキャピタルやヘッジファンドなど)に投資することで、リスクを軽減することです。

ハイリスクの投資商品をポートフォリオに加えることは、危険だと思われるかもしれません。しかし、異なった動きをする資産、または反対の動きをするものを上手に組み合わせることは、リターンを強化することにも減少させることにもなりえますが、長じて包括的なポートフォリオにおけるリスクを軽減することになるのです。一般的に、外国株式は、国内株式に比べ、よりリスクが高いと考えられているようですが、米国株式市場が上昇した同じ日に、他の外国株式市場が下落することもしばしば見受けますし、逆もまた然りです。

他の資産クラスとの相関性を考慮

これをネガティブ・コラレーション(負の相関関係)と呼びます。異なった動きをする資産クラスに投資することで、ある資産からの利益が他の資産からの損失を相殺するということです。異なる国の株式を組み合わせることは、実際にはポートフォリオ全体における日々の価格変動によるリスクを減らすことになるのです。

多くの市場で同じような負の相関関係が見られることは、歴史が物語っています。通常、不景気時には、債券価格が上昇し、債券のパフォーマンスが株式を上回ります。過熱した好景気時には、インフレにより、コモディティ市場は華々しいリターンを捻出します。しかし、市場状況の変化は予知できませんし、このリターンの変動性が投資家にとってはリスクを意味するのです。株式だけ、債券だけというように、一つの資産を選んで投資することは、リスクを増大させ、市場が期待以下の動きだった場合に損失をもたらします。

複数の異なる資産を組み合わせることでリスクを軽減することは、簡単な工程ではありません。それぞれの資産クラスが独自のリスク基準があるにも関わらず、似通った価格変動をすることが多々あるからです。相関性の高い資産クラスを組み合わせて保有することは、反って価格変動リスクを増大させてしまいます。リスクと期待リターンとの兼ね合いは、必ず考慮しなくてはなりません。一般的に、高いリターンが期待できる投資商品は、高い変動率と大きな価格変動が伴います。このような投資商品は、低リスク商品と合わせて投資をすることで、大きな価格下落を未然に防ぐようにしなくてはなりません。

投資成功の秘訣は、許容できるリスクレベルに合わせ、適切な資産をバランスよく組み合わせて資産配分をすることです。均衡のとれたポートフォリオにするために、不動産、債券、株式、コモディティ、通貨などの資産クラスへの投資する際には、地理的に分散させることは当然ですが、他の資産クラスとの相関性も考慮しなくてはなりません。

自分の考えを反映した手法を選択する

この10年の間に、ヘッジファンドは絶大な人気を博すようになりました。特に、2001年から2003年の前回の景気後退期には、継続的にリターンを計上しました。世界中の株式市場が下落し、株式のみに投資している投資家が自分の資産がどんどん目減りしていくのをなすすべもなくただ見守るしかないという状況下でさえ、ヘッジファンドは利益を出してきたのです。こうして、ヘッジファンドは、見事に市場との相関性の低さを立証しました。今では、株式や債券のみのポートフォリオにおいて、ヘッジファンドは、リスクを相殺する便利な投資ツールとして認識されるようになりました。また、同様に、株式や債券市場との相関性が低いと見なされる商業用地などの不動産も、リスクヘッジの道具として考えられています。こうしたヘッジ要素をポートフォリオに加えることで、包括的な利回りを強化すると同時に変動率を抑制することが可能となるのです。

資産配分に留意し、信念を持って投資をしていきましょう。アメリカやヨーロッパでは、裕福な投資家または最低投資金額100万ドル(一億円)以上のファンドに投資できる富裕層のみが、ヘッジファンドやプライベートエクイティといった投資にアクセスでき、永続的にさらに富を築き上げてきました。しかし、近年では、一般の投資家も手の届く金額でこうした投資商品に投資できる機会が増えています。もし、あなたが自分の資産を増大、もしくは保全したいのならば、理に適った算定可能なリスクをとることを恐れない海外の投資家から学び、習うことが必要です。必要以上に保守的になり、金利がゼロに近い状態で銀行に資金を眠らせておく理由はありません。インフレは年率3-4%で進行し、同時に、あなたの資産は、毎年、減り、奪われていっているのです。

また、日本株式だけに投資をしていては、超人的な銘柄選定の名手でもない限り、日本市場は過去10年間、現にほとんど何の利益も生み出していません。世界の異なった地域、市場、様々な資産クラスに分散投資することで、初めて、本当にバランスの良いヘッジの効いたポートフォリオが完成します。ポートフォリオを作成する際には、注意深く選択肢を検討してください。どの選択肢にも、メリットとデメリットがあります。自分の考えを一番反映している手法を選択してください。なぜ、アセット・アロケーションが重要なのか。それは、あなたの長期間のフィナンシャル・プランニング成功を決定づける、最も大きな要因だからです。

次回は、他通貨を保有することで、ポートフォリオ内に、どのような分散効果がもたらされ、リターンの向上と、変動率を低下させることができるのか、ポートフォリオ内の通貨分散について、詳しくお話していきます。

日本円を保有するだけでなく、効率的な外貨への通貨分散投資を

私たちは日本に居住し、日本円で日々の買い物をし、日本円中心に生活を送っているために、自然と日本円を基軸に物事を捉えがちです。しかし、グローバルな経済社会において、世界の基軸通貨は日本円ではなく、日本も例外なく他国の経済に依存しています。  資産の全てを日本円で保有するということは、リスクにもなりえます。例えば、日本円が下落し、主要通貨に対し仮に20%円安になったとしたらどうなるでしょうか。世界経済の中で、日本円の購買力が20%下落してしまう事になります。食料をはじめ、生活必需品の輸入依存が高い日本においては、海外からの輸入品価格が円価で20%上昇します。円の購買力が低下することにより、海外旅行へ行っても20%多く費用がかさむことになります。

つまり、現代社会では、他国の通貨に関しても、より注意を払っていく必要性が求められているのです。

前回、ポートフォリオ内での資産配分の重要性についてお話しました。他通貨を保有することも、同様に、相関性を低くし、分散効果をもたらします。通貨分散は、バランスの良いポートフォリオ作成に不可欠です。

ポートフォリオに外貨資産を組み入れるときには、為替リスクを考慮し、中長期的に捉える必要があります。円高に推移することで、トータル資産が円換算すると目減りするからです。外貨建て資産の運用において年間10%のリターンが上がっても、その通貨が同時に円に対して10%下落した場合、運用収益は円換算で全て吸収されてしまいます。しかし、5年~10年といった中長期で考えた場合、日本円の価値が50~100%と大きく円高に推移することは考えにくいことですので、為替リスクは投資運用期間の長さに応じて軽減されるといってよいでしょう。

私が執筆をしている時点では、1米ドル=100円あたりを推移しています。今後、数年の内に、同レートは120円位に下落するポイントがまた来るでしょう。実際、私が初来日して以来、米ドル-日本円の為替相場は、幾度も1ドル100円から120円の間で上下変動を繰り返してきたからです。

効果的運用をするには投資先の通貨で投資を

外国為替市場は波のように動きますから、自分の資産価値が上下しないよう、主要外国通貨のように安定した資産を保有することは、バランスのとれたポートフォリオを作成するために重要です。外貨建て資産をポートフォリオに加える一般的な方法としては、外国債券や外貨建てのミューチュアル・ファンドへ投資することでしょう。

では、外国に投資する円建てのファンドへ投資するというのはどうでしょうか。米国、欧州、またはアジア株へ投資する円建てファンドが、日本の証券会社からたくさん販売されています。ファンドは円建てであっても、実際にファンドが市場で投資をするときには、米国株を買うときには米ドルが、欧州や英国株を買うときにはユーロや英ポンドが必然的に求められます。つまり、外国へ投資する運用商品は、実際には、その外貨での投資配分を持つようになるのです。

円建てで外国へ投資する運用商品の場合、もし、円がこれらの国の通貨よりも強くなると、ファンドのパフォーマンスは落ちてしまいます。逆に言えば、円が弱くなると、その運用商品から得られる利益は拡大します。

実質的な運用商品のパフォーマンスを享受するには、その投資先へ投資する際に必要になる通貨で投資をする方が、効率的といえます。

外国人投資家にとって、これまで、為替リスクは第一の懸念事項ではありませんが、考慮すべき副次的なリスクでした。外国会計の慣習や政情が、国際投資をする上での主要リスクとして考えられてきました。ドルに対する信用が低下する一方、他の経済圏が急速に成長し、世界経済資本に占める割合が拡大する現在では、国際分散投資ポートフォリオ作成において、通貨分散は鍵となるようになるかもしれません。

過去の外国為替相場から為替変動範囲を想定して投資

では、いったいどのくらい外国通貨へ配分をすれば良いのでしょうか。それは、その資金を自国通貨で使用するようになるかもしれない時期までの期間と、投資しようとしている時点での経済状況の二点によって決まります。

国際投資の現状を見ると、ミューチュアル・ファンドやヘッジファンド、コモディティファンドなど投資商品の約7割が米ドル建てです。特に、オイルや金などほとんどのコモディティが米ドルで価格設定され、世界中で取引されています。では、ポートフォリオにおける7割を米ドル建て資産で保有すれば適切なのでしょうか。ここで問題になるのは、どこで利益を得ようとしているのか、海外投資の場合、短期間での海外投資は為替リスクを増大させるため、投資期間が見合っているかどうかという点です。中長期的な視点で投資を考えるならば、為替相場は、循環し、戻ってくるため、為替リスクは軽減します。例えば、日本円は、米ドルに対し、ほぼ90円から120円の間で過去20年間動いています。この期間に7回も上がったり下がったり変動を繰りかえしています。過去の外国為替相場から、私たちは為替変動範囲が想定できるのです。

米ドルの下落リスクを避けるためには、ポートフォリオ内の通貨を分散して保有する必要があります。豪ドルや加ドル、ユーロ、英国ポンド、スイスフランは米ドルに対して著しく強くなっており、米ドルだけのポートフォリオは、ここ数年間でこれらの通貨に対して30%ほど目減りしています。しかし、更に重要なことは、外国為替相場の歴史的なサイクルを考慮することです。ある通貨を歴史的な高値で買ってしまうと、数年のうちに下落していくのを見守るしかなくなってしまいます。

様々な通貨や資産を保有することでのメリットもありますが、米ドルを保有し続けることで、下落する米ドルから利益を得ることもあります。コモディティを対象とした運用商品やファンドが例として挙げえられます。米ドルの下落によって、オイルや金が最高値を更新しました。米国に対する悲観的な見通しが、コモディティ価格上昇をさらに後押しし、インフレを加速させ、歴史的な高値を演出しました。ヘッジファンドの多くが良いポジションをとり、利益を生み出し、また米ドル下落の中、米ドルを空売りすることでも大きな利益を得ました。

つまり、米ドルのように過小評価され、売られすぎている外貨から順に組み込み、通貨分散を図ることは、バランスの良いポートフォリオを作成する上で理に適っていると言えるでしょう。しかし、英国ポンド、ユーロ、豪ドルのように歴史的な高値にある外貨を、今日の投資環境下で、あえて新たにポートフォリオへ加えることは、かえってリスクを増大させてしまうことになってしまうのではないかと、私は危惧します。

次回は、このような不安定な市場下でも、緩やかな上層曲線を描くようなファンドについてお話していきたいと思います。

時間をかけて変動を抑え、緩やかな上昇曲線を描くウィズプロフィットファンドを知ろう

不安定な市場下でも上昇しているウィズプロフィットファンド

私も苦手とすることですが、皆さんも突然自分の運用資産が急落したと聞くのは避けたいでしょう。急激な市場の変動によって、パニック状態になり、売却しようとするときには、大抵最悪のタイミングです。大事に育ててきた資産価値が下落すると、このままどんどん少なくなってしまうと考えて、脅え、不安になるのは人間の性として当然です。ロスカットして売るべきタイミングかもしれないと思案する方もいらっしゃるでしょう。資産クラスによっては、このようなマーケットは、追加投資をする絶好のタイミングにもなりえるということを理解してはいても、今回は異なり、回復しないかもしれないと躊躇してしまう方が一般的だと思います。長期的には、株式市場は上昇しますが、短期的な変動率に挫けて、多くの投資家がその信念を曲げてしまうのです。

そんな人間の心理をもってしても、上手く投資できる投資商品があります。 時間をかけて変動を抑え緩やかな上昇曲線を描く、ウィズプロフィットファンドと言われるファンドです。マーケット状況が良いときの利益の一部を留保して、マーケット状況の悪く、パフォーマンスが奮わなかったときに、ボーナスとして留保部分から補填するというスムージング手法が用いられています。このスムージング効果によって、安定的なリターンが毎年もたらされ、株式市場が急落しているときにでも定期的な上昇を得ることができます。

ウィズプロフィットファンドの目的は、直接株式市場に投資するよりも低い変動率で、政府発行債や社債よりも高いリターンを長期的に提供することです。特に、現在のような不安定な市場下でも、継続的に上昇している点は、とても魅力的です。ウィズプロフィットファンドは、中長期の投資商品として設計されているため、5年以上の投資がお勧めです。その投資期間を通して、投資家は継続的な緩やかな上昇を享受することができます。

様々な資産に分散投資し、平均的に6%前後のリターンを計上

この緩やかな上昇曲線を描くウィズプロフィットファンドは、英国で発達しました。初めて発行された証券は1583年のエリザベス一世時代にまで遡り、それ以来、この投資コンセプトは英国の金融市場の最先端で発展してきました。現在のウィズプロフィットファンドの原型は150年前に完成したと言われています。そして、現在では、英国で運用されている資産の10% 以上を占める約7400億ドルが投資され、年金運用の40% 以上にあたる資産運用が行われています。そのため、留保部分の資金は、英国金融サービス庁の厳しい監視下におかれています。

典型的なウィズプロフィットファンドは、株式、債券、商業用不動産など様々な資産に分散投資するバランスファンドです。平均的に6%前後のリターンを計上しています。これまで、このファンドへの投資は、機関投資家だけに限られていました。しかし、今では複数の運用会社が、ウィズプロフィットファンドへの投資機会を個人投資家へも提供しています。

これらの運用会社が提供するファンドには、機関投資家用レバレッジを用いて、ウィズプロフィットファンドへ投資しているものもあります。特に最近では、金利が下がっているので、米ドルを3%で借入れ、6-7%の利益が上がれば、その差額で、魅力的な利益を生み出せます。このようにリスク管理可能な範囲のレバレッジを少しかけることで、変動率に左右されることなく、二桁のリターンを上げることもできるのです。

こういったファンドのパフォーマンスと堅実さには目を見張るものがあり、過去10年間を見てみると、年平均リターン10-12%と、大型ミューチュアルファンドよりも良いパフォーマンスを残してきました。また、運用会社の中には、原資産であるウィズプロフィットファンドの投資基軸通貨である米ドル、ユーロ、英国ポンドに加え、豪ドルや円建てのファンドクラスを設定しているところもあります。

典型的なウィズプロフィットファンドは、バランスファンドに似ていますが、大きな相違点は、スムース化です。現在、英国では数十本のウィズプロフィットファンドが運用されていますが、運用規模や耐力の違いから、運用会社によって、そのスムース化を図るスキームに差が見られます。トップレベルの会社では、大きな資本力を背景に、運用制限が少ない点が特徴的です。脆弱な会社では、運用制限が発生することも考えられるため、長期的に良いリターンを計上していくことは難しいでしょう。

例えば、大手プルデンシャルでは、アクティブ運用を重視し、非常に良いパフォーマンスを残していましたが、90年代後半には、アクティブ運用のままではリターンが減少することを事前に予期し、ウィズプロフィットファンドの資産を商業用不動産や政府発行債といったリスクの低い資産への比重を多くし、パフォーマンスを維持することに成功しています。

長年運用実績のあるウィズプロフィットファンドは、元本保証に近い

株式市場への直接投資とは異なり、留保部分からの配当の還元を上手く機能させた、長年に渡る運用実績のある会社のウィズプロフィットファンドは、元本保証に近い保証を提供しているとも言えるでしょう。過去のファンドパフォーマンスに基づく配当率を設定し、将来期待できるパフォーマンスを計算し、支払い能力維持に努めています。ここで重要なのは規模の問題ではなく、金融機関の信用力です。信用力は、スタンダード&プアーズなどの外部機関が与える格付けによって測ることができます。

勿論、ウィズプロフィットファンドにも銀行預金と比較すれば、リスクはありますが、リスクグレードとしては、債券よりも少し高く株式より低いという程度です。特に5年以上という期間でみれば、限られた変動率と低いリスクで、手堅くリターンをあげている効率の良い投資商品と言えるでしょう。不安定な市場状況下では、現金として銀行預金に預けておくことが得策のように思われるかもしれませんが、資産を増やしたいと考えている方は視点を変えてみてください。こうしている現在も、あなたの資産はインフレに侵食され、どんどんと減っているという事実に気づくでしょう。世界中が高いインフレに見舞われている現在では尚更です。

次回は、インフレの進行と共に注目されているコモディティについてお話したいと思います。

コモディティの存在を知り、インフレから資産を守る

高騰する商品価格インフレからいかに資産を守る?

ガソリンスタンドやスーパーマーケットでの値上がりを目の当りにし、私たちは、ようやく世界中で何かが起きていると気づくようになりました。メディアでも原油価格の急騰が取り上げられるようになり、注目を集めています。このような状況はしばらく続くのでしょうか。それともこれまでの通常の状態に戻るのでしょうか。

世界数十億の人々が、原油価格と共に高騰する穀物価格の推移に危機感を抱いています。年初来、麦、コーン、米、大豆の全てが過去最高値を更新するレベルを記録しました。国際的な穀物価格の高騰を受け、貧困地域では飢餓の脅威から人々が暴動を起こし抗議する事態が多発しています。世界銀行の試算によると、食糧価格は過去3年間に約83%上昇しており、その結果、少なくとも1億人が栄養失調に苦しんでいるとみられています。日本では、世帯所得の約15% が食費に充てられていると言われていますが、新興国では、世帯所得の約55%が食費に費やされています。すなわち、パンや米などの主食価格が倍になると、生活の逼迫に直結してしまいます。この穀物価格の高騰には、不作や一部では天候変化、原油価格の上昇による輸送コスト高、インド、中国に代表される新興国諸国の急激な経済成長による穀物需要の激増など、様々な要因が重なり合っていると言われています。

近年、増産の一途を辿るバイオエタノール燃料。原料として使用されるコーン等の穀物生産需要の拡大が価格高騰を引き起こし、農地拡大による食糧貯蔵不足によって更に価格高騰が進むとの懸念が指摘されています。

貧しい人々にとっては、どのように食費を賄っていくかということが課題になりますが、富裕層にとっては、どのようにしてインフレから資産を守るかということが問題です。金融市場で資産形成するために、株式、債券のことだけ知っていれば良い時代は終わりました。世界経済のこの革命的な変化によって、私たちは、もはや、コモディティの存在を無視できなくなりました。

では、そもそもコモディティとは一体何なのでしょうか。世界中の誰もが生活する上で必要な現物資産です。日々過ごす中で、何をよく使うか考えてみてください。形は様々に変化していますが、その原料は、天然ガス、コーン、麦、綿、ウール、銅、金、銀、砂糖、コーヒーやココアなどが挙げられます。よく天然資源と見なされることもありますが、コモディティとは地球上の誰もが必要とするものです。そして、多くの投資家が認識するように、今日では天然資源の需要が世界的に高まっています。

コモディティ投資が簡単にできるようになった

しかし、金、銀、原油、砂糖といった天然資源への投資は、難しく、投資するには多額の投資資金が必要になると思い、しりごみする人が多いようです。確かに以前はその通りでしたが、現在は異なります。数年前に投資していれば、大きく利益を出していたことでしょう。現在では、誰もが簡単に少額からコモディティに投資できるようになりました。

これまで以上に天然資源への投資は容易になっているのです。
では、なぜ、今、コモディティに投資するべきなのでしょうか。主な理由は4点です。

  1. 供給が少なく、世界的に需要が高まっているということは、天然資源価格は上昇するということ。
  2. コモディティは、ポートフォリオの分散を強化し、リスクを低くし、リターンを高めることを可能とする。
  3. 経済低迷期、株式市場下落時には、現物資産を保持することで、資産保護機能が働く。
  4. タイミングが正しければ、平均的に、コモディティの上げ相場は約18年サイクルで回っているので、まだ余地がある。

供給量の低下と需要の高まりのため、多くのコモディティで歴史的な高値を記録しています。中国、インド、ブラジルなどの急速な経済発展に伴い、天然資源への世界的な需要が高まっているためです。例えば、中国は、世界で最も急激な経済成長を遂げており、世界をリードする銅、鉄鋼、原油等の消費国になっています。そして、重要なことは、世界には、需要に合致するだけの充分なコモディティの供給量がないということです。

供給量の低下は、数十年に渡る天然資源への過少投資の結果もたらされました。1980年から90年代の間、コモディティには必要最低限の投資しかされていませんでした。例えば、金鉱会社では、金属を生産、採掘する道具などの設備投資を怠ってきました。未加工金属を発見してから市場に出すまでに10年以上かかります。生産までに要する時間が短いコーヒーのような農産物でさえ、実際にコーヒー豆として出荷されるまでには数年かかります。コーヒーの木が成熟するには5年以上かかるからです。

この需要と供給のバランスが改善されるまでには、何年もかかることでしょう。

歴史的な低供給下において、天然資源の需要が世界的に高まる中、コモディティ市場に投資をすれば、価格上昇の恩恵を受けられるでしょう。

コモディティは歴史的に低リスクで高リターン

コモディティに投資することは、皆さんが想像しているほどリスクが高いものではありません。コモディティへ投資するよりも、株式や債券に投資する方が安全だと考えている投資家が多いことに驚かされます。歴史的に、コモディティは、株式よりも低いリスクで魅力的なリターンを上げてきました。エール大学国際金融センターの最近の興味深い研究によると、株式やコモディティに分散された投資ポートフォリオは、100%株式へ投資しているポートフォリオよりも、リスクが低下することが明らかになっています。

長期的には、ほとんどのコモディティは極めてしっかりとしたファンダメンタルズを持っています。早いペースで世界人口が増加し、インフラ整備が進んでいく中で、需要は確実に高まっていきますから、天然資源は大量に求め続けられていくでしょう。特に、アジアの発展はまさに始まったばかりです。

賢い資産配分プランニングには、よく分散されたポートフォリオを作成することが重要です。そうすれば、ポートフォリオの一部が大きく目減りしても、他の資産のパフォーマンスがカバーしてくれるでしょう。そのためには、異なった資産が異なった動きをすること、つまり相関性が低い資産へ分散投資しなくてはなりません。

一般的に、債券は株式との相関性が低いため、投資家は債券をポートフォリオに加えることを好みます。一方、コモディティ、特に商品先物は、株式や債券と反対の動きをしてきました。言い換えれば、株式と債券が南へ向っているときに、コモディティは北へ向うのです。コモディティは、唯一、債券と反対の相関関係にある資産クラスであり、分散投資における強力な道具になります。もっと上昇する可能性もありますが、同時に、下落する余地も多分に含む原油など、一つの品目に賭けるのではなく、バランスよく投資することが大事です。つまり、今日、現物資産コモディティに投資するということは、今後もコモディティ価格が上昇するという方向性に賭けるということではなく、投資商品の下落局面でのヘッジを強化し、資産を保全するために重要なのです。

コモディティ投資でインフレに備える

いま適正価格のコモディティ品目は何か?

安全なコモディティへの投資方法は、当然ですが、需要が高まり供給が減少している、まだ価格が高騰しバブル状態になっていないコモディティへ投資することです。最近では投機筋の資金流入もあり、多くのコモディティ価格が、バブル模様を呈し、需給関係に基づく現実的な価格から乖離しているようです。

急速に成長するバブル状態の中へ資金を投入することは、大きな利益を生み出せるでしょうが、バブルが弾けたらどうなるでしょうか。その苦い現実を受け止められる投資家は少ないでしょう。最近のベトナム市場が良い例です。2006年から2007年の間、同市場は活況に沸いていましたが、2008年には最高値から70% 近く下落しています。

では、現在、適正価格で投資する機会がコモディティ市場のどこにあるのでしょうか。非現実的なバブル状態になく、今後の成長余地がある、ソフトコモディティや世界の急成長地域の一種の不動産など、いくつかのコモディティ品目を見てみましょう。

農産物(穀物、繊維、食物関連)への投資

  • 人口増加による需要の高まり
  • 水不足による耕作地及び気候変動による収穫高の減少
  • 代替エネルギー、バイオ燃料原料としての穀物使用量の増加

畜産物への投資

  • 新興国の世帯収入の増加に伴う肉食嗜好の高まり
  • 食費、人件費、輸送費の増加による生産コストの増加
  • 中国の伝染病などによる劇的な豚の減少と、それに伴う価格上昇
  • 乳製品、卵など日常必需品や革製品等の二次製品の需要増加

代替エネルギーへの投資

  • 伝統的なエネルギー源価格の上昇が下支えとなり、代替エネルギーへのエネルギー移行はより魅力的、現実味を帯びてきている
  • 環境保護に対する国際的な危機感の高まり
  • 風力発電が現実的な代替電力供給として発達中
  • 代替エネルギー使用に対する税制的優遇措置が採択されるなど、政治的な影響の強まり

水資源への投資

  • 国連の試算では、2025年までに世界的な水不足によって、水は最も貴重な資源の一つになるとの見通しであり、清潔な水資源の確保は、世界経済にとって、非常に重要な課題
  • 水資源の減少と人口増加による需給逼迫の恐れ
  • 工業部門と農業部門で今後、水の争奪戦が加速する恐れ

未造成地への投資

  • 土地は限られている
  • 人口増加により、住宅用地、観光用地、農業用地の需要が増加
  • 未造成地ゆえに投資金額・管理コストを共に低く抑えることが可能

コモディティファンドへの投資でリスクを軽減

コモディティへ投資し、そのメリットを享受しつつ、リスクを最小限に抑えたいのならば、 コモディティファンドへの投資が有効的です。特定のコモディティ品目のインデックス、もしくは数品目のコモディティに投資をしているようなETF(上場投資信託)や、様々なコモディティファンドがあります。こういったファンドは、異なるコモディティが混ぜ合わさっているため、リスクが緩和されます。

しかしながら、大半のコモディティファンドがディレクショナル戦略(市場の方向性に賭ける手法)を用いているか、原油市場への投資比率が高いインデックスファンドです。私が執筆している現段階では、原油価格は1バレル137米ドルを記録しています。投機マネー流入の影響もあり、原油価格は今後も上昇し続けるかもしれませんが、大きく値を下げる危険性も多分に含んでいます。もし、1バレル60-80米ドルの水準まで落ちれば、下落リスクに対するヘッジをしていないコモディティファンドの多くが記録的な下落を経験することになるでしょう。このような買い持ちのみのコモディティファンドと異なり、上昇するコモディティ価格からの利益と同時に、下落するコモディティを空売りすることでも利益を上げる可能性を持っているのが、マネージド・フューチャーズです。

マネージド・フューチャーズ運用の強みは、株式や債券市場との低い相関性です。今後、相場が上昇するだろうと見込む時には、先物ポジションを買い、今後の下落が予測される時には、先物ポジションを売ることで、変動の少ない揉み合い時には、オプションや先物取引を駆使して、利益を上げようとします。つまり、市場が上昇していても、下落していても利益を出す可能があるということです。この可能性を「絶対的リターン」と表現することもあります。低い相関性と相俟って、マネージド・フューチャーズは、ポートフォリオにおける申し分のない分散ツールとなるでしょう。

マネージド・フューチャーズへの投資により、異なる経済状況においても利益を出せる可能性があることから、ポートフォリオ内のリスクを軽減し、リターンを強化すると同時に、簡単にグローバル分散投資が行えます。また、流動性に優れた上場先物・オプションを用いてレバレッジを効かした大量売買を行うため、取引コストが安くすむという利点もあります。あるマネージド・フューチャーズ・ファンドは、100を超える品目を24時間体制で監視し、世界の140以上の市場で取引を執行しています。

マネージド・フューチャーズはトレーダーの手腕を見極めて

マネージド・フューチャーズは、従来の投資商品のように、投資対象の長期的な成長によるリターンだけを享受するものではない為、巧みな技術・ストラテジーが必要とされる投資商品です。それ故に、トレーダーの手腕が問われます。近年、このトレーダーの動向が瞬間的な市場価格変動の要因であると指摘されてきました。市場関係者は、投資家がベンチマークとして利用できるように、マネージド・フューチャーズ・インデックスを作成しました。マネージド・フューチャーズは、各々のマネージャーによって様々な投資手法があり、リターンも大きく異なるため、投資家は、このようなインデックスを参考にしながら、注意深くファンドを選定する必要があります。

歴史的に、マネージド・フューチャーズは、下げ相場や金融危機時に本領を発揮してきました。CSFBマネージド・フューチャーズ・インデックスを見てみると、市場に歪みが生じたときほど、非常に良いパフォーマンスを記録しています。1994年メキシコ通貨危機、1998年ロシア財政危機とLTCMの崩壊、2000年―2002年のITバブル崩壊、2001年9月11日の米国同時多発テロ、このような時期にS&P500インデックスに比べ、9%以上パフォーマンスが高かったのです。

世界に目を向けると、10年以上のトラックレコードを保有し、年平均リターン15%を超え、許容範囲内の変動率を誇る傑出したマネージド・フューチャーズ・ファンドがいくつか存在します。マネージド・フューチャーズのようなヘッジファンドは一般の投資家にはリスクが高すぎると誤解されている方もいらっしゃいますが、ヘッジファンドやマネージド・フューチャーズ・ファンドは無数にある為、一概に一般化するのは安易な考えと言えるでしょう。ハイリスク・ハイリターンの積極的な運用をするものや、保守的なものからミドルリスクのものまで個々のファンドによって異なります。

このようなマネージド・フューチャーズ・ファンドやコモディティファンドをポートフォリオに組み込むことで、包括的なポートフォリオのリターンを強化し変動率を抑えた多くの投資家に適したポートフォリオを作成できることは間違いありません。

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