全ての金融資産に投資し、リスクを軽減

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過去の株式市場を振り返ると、90年代後半や2003年から2007年半ばまでに見られたような上げ相場下では、誰がどのような商品、銘柄をポートフォリオに組み込んでも収益を上げることができました。しかし、最近の株式市場の変動には、多くの投資家が困惑しています。このまま株式市場は勢いを増し続けていくだろうと考えていた投資家も、含み損を抱え始め、これ以上損失が拡大しないように、資産を分散し、ポートフォリオ作成する重要性を再認識するようになりました。
アセット・アロケーション(資産配分)は、投資成功の重要な鍵を握っています。学術的研究、分析調査からも、投資結果を大きく決定づける要因であると証明されています。資産配分は、ポートフォリオの長期的なリターンとリスク低減に影響を及ぼします。個別有価証券の選定やマーケットタイミングなど、他の要因は、実は、包括的な投資リターンにおける影響のごく僅かな割合しか占めていません。しかし、残念なことに、この投資成功の決め手となる最も重要な鍵が、一番理解されていないのです。
では、資産配分とは一体何なのでしょうか?
資産配分と資産分散を混同されている方が多いようですが、これら二つは目的、方法など異なる手法です。類似する資産クラス内で、複数に分けて投資しようとした場合、同じ資産クラス内では分散投資先が限られてしまいます。例えば、テクノロジー株式に投資をしようと銘柄を選択し、五、六社の株式に投資したとしましょう。しかし、投資しているのは、全てテクノロジー産業内です。この場合、このうちの一社の株式が下落した場合にはリスク軽減になりますが、テクノロジー産業全体、もしくは株式市場全体がスランプに陥ってしまったらどうなるでしょうか。
資産配分とは、分散投資を超えて、全ての金融資産(現金、株式、債券、コモディティ、不動産、さらにはベンチャーキャピタルやヘッジファンドなど)に投資することで、リスクを軽減することです。
ハイリスクの投資商品をポートフォリオに加えることは、危険だと思われるかもしれません。しかし、異なった動きをする資産、または反対の動きをするものを上手に組み合わせることは、リターンを強化することにも減少させることにもなりえますが、長じて包括的なポートフォリオにおけるリスクを軽減することになるのです。一般的に、外国株式は、国内株式に比べ、よりリスクが高いと考えられているようですが、米国株式市場が上昇した同じ日に、他の外国株式市場が下落することもしばしば見受けますし、逆もまた然りです。

他の資産クラスとの相関性を考慮

これをネガティブ・コラレーション(負の相関関係)と呼びます。異なった動きをする資産クラスに投資することで、ある資産からの利益が他の資産からの損失を相殺するということです。異なる国の株式を組み合わせることは、実際にはポートフォリオ全体における日々の価格変動によるリスクを減らすことになるのです。
多くの市場で同じような負の相関関係が見られることは、歴史が物語っています。通常、不景気時には、債券価格が上昇し、債券のパフォーマンスが株式を上回ります。過熱した好景気時には、インフレにより、コモディティ市場は華々しいリターンを捻出します。しかし、市場状況の変化は予知できませんし、このリターンの変動性が投資家にとってはリスクを意味するのです。株式だけ、債券だけというように、一つの資産を選んで投資することは、リスクを増大させ、市場が期待以下の動きだった場合に損失をもたらします。
複数の異なる資産を組み合わせることでリスクを軽減することは、簡単な工程ではありません。それぞれの資産クラスが独自のリスク基準があるにも関わらず、似通った価格変動をすることが多々あるからです。相関性の高い資産クラスを組み合わせて保有することは、反って価格変動リスクを増大させてしまいます。リスクと期待リターンとの兼ね合いは、必ず考慮しなくてはなりません。一般的に、高いリターンが期待できる投資商品は、高い変動率と大きな価格変動が伴います。このような投資商品は、低リスク商品と合わせて投資をすることで、大きな価格下落を未然に防ぐようにしなくてはなりません。
投資成功の秘訣は、許容できるリスクレベルに合わせ、適切な資産をバランスよく組み合わせて資産配分をすることです。均衡のとれたポートフォリオにするために、不動産、債券、株式、コモディティ、通貨などの資産クラスへの投資する際には、地理的に分散させることは当然ですが、他の資産クラスとの相関性も考慮しなくてはなりません。

自分の考えを反映した手法を選択する

この10年の間に、ヘッジファンドは絶大な人気を博すようになりました。特に、2001年から2003年の前回の景気後退期には、継続的にリターンを計上しました。世界中の株式市場が下落し、株式のみに投資している投資家が自分の資産がどんどん目減りしていくのをなすすべもなくただ見守るしかないという状況下でさえ、ヘッジファンドは利益を出してきたのです。こうして、ヘッジファンドは、見事に市場との相関性の低さを立証しました。今では、株式や債券のみのポートフォリオにおいて、ヘッジファンドは、リスクを相殺する便利な投資ツールとして認識されるようになりました。また、同様に、株式や債券市場との相関性が低いと見なされる商業用地などの不動産も、リスクヘッジの道具として考えられています。こうしたヘッジ要素をポートフォリオに加えることで、包括的な利回りを強化すると同時に変動率を抑制することが可能となるのです。
資産配分に留意し、信念を持って投資をしていきましょう。アメリカやヨーロッパでは、裕福な投資家または最低投資金額100万ドル(一億円)以上のファンドに投資できる富裕層のみが、ヘッジファンドやプライベートエクイティといった投資にアクセスでき、永続的にさらに富を築き上げてきました。しかし、近年では、一般の投資家も手の届く金額でこうした投資商品に投資できる機会が増えています。もし、あなたが自分の資産を増大、もしくは保全したいのならば、理に適った算定可能なリスクをとることを恐れない海外の投資家から学び、習うことが必要です。必要以上に保守的になり、金利がゼロに近い状態で銀行に資金を眠らせておく理由はありません。インフレは年率3-4%で進行し、同時に、あなたの資産は、毎年、減り、奪われていっているのです。
また、日本株式だけに投資をしていては、超人的な銘柄選定の名手でもない限り、日本市場は過去10年間、現にほとんど何の利益も生み出していません。世界の異なった地域、市場、様々な資産クラスに分散投資することで、初めて、本当にバランスの良いヘッジの効いたポートフォリオが完成します。ポートフォリオを作成する際には、注意深く選択肢を検討してください。どの選択肢にも、メリットとデメリットがあります。自分の考えを一番反映している手法を選択してください。なぜ、アセット・アロケーションが重要なのか。それは、あなたの長期間のフィナンシャル・プランニング成功を決定づける、最も大きな要因だからです。
次回は、他通貨を保有することで、ポートフォリオ内に、どのような分散効果がもたらされ、リターンの向上と、変動率を低下させることができるのか、ポートフォリオ内の通貨分散について、詳しくお話していきます。