オフショアバンクとは、富裕層や著名人のためのものなのでしょうか。それとも、誰もが口座を開設し、資金の預け入れを検討すべきものなのでしょうか。

まず、オフショア(offshore)の定義から考えて見ましょう。

オフショアの意味とは、“Off”「離れて」の意味に“Shore”「沖」で、沖合つまり海外を意味します。オフショア地域には、“Tax Haven” (租税回避地)とも呼ばれ、税制上の優遇を受ける事のできる金融特別区があります。つまり、自国の産業・天然資源にも恵まれない小国・離島が、海外から産業を誘致する為、金融に対する合法的優遇措置を設定した“特別金融区”のことです。その代表としては、チャネル諸島や、ケイマン諸島等が挙げられます。金融優遇措置を受ける為に、その様な地域に世界中の金融機関が支店を設立しています。

オフショア(offshore)に存在する銀行に様々な理由から、口座を開設し、資産を預ける方がいらっしゃいますが、実際には存在しない利点が得られると誤解されている方をよく見受けます。その共通する誤解とは、オフショアバンクの口座に資産を預けることで、納税義務から免れることができるというものや、海外へ直接投資する際にはオフショア銀行の口座開設をする必要があるなどという考えです。主に、これら二つの間違った動機から、オフショアバンクに口座を開設することを検討されているのではないでしょうか。

今現在の日本の法律では、日本在住の方は、どの国や地域に資金を保有しようとも、利息や利益を得ようとも、日本の税務署に対する報告義務がありますし、銀行の所在地がどこであれ、毎年得た利息分の税金は支払う義務があります。

海外直接投資にオフショア銀行は不要

また、もう一つの誤解とは、海外直接投資をするには、オフショア銀行で口座開設が必要だという考えです。この考えは誤りです。全ての投資家の方に必要なのは、直接投資資金を海外の運用会社のカストディアン口座に送金することです。つまり、日本の銀行口座から海外送金を行い、直接投資を行うことが可能ですので、必ずしもオフショア銀行に口座を保有する必要はありません。

そして、数年後に投資家の方が運用商品を売却するときには、運用会社がその解約金を直接世界中の投資家の銀行口座へ送金します。日本の銀行口座やオフショア銀行口座への送金も可能です。オフショア銀行口座を指定した場合、その後日本への銀行口座への送金は、ご投資家ご自身が、ご自分でそのオフショア口座から日本の銀行口座に振り込むように手配をとることになります。しかし、繰り返しになりますが、オフショアの銀行口座を利用しても、日本の投資家が納税義務を逃れられるということではありません。

最近では、フィナンシャル・コンサルタントや旅行会社でさえ、香港への銀行口座開設補助をオプションに含んだツアーを開き、集客しているようです。現に、香港のHSBCやCitibankでは、休日の定例行事のように日本人が時には数十人も口座開設のため列を成しているという話を銀行担当者から聞いております。この現象は、オフショア(海外)にお金を隠し、税金を払わなくても良いという考えで脱税を指南する人によって推進された噂がもたらしているのだと思います。これは、大きな間違いです。

オフショア銀行の真のメリットは保有資産の分散

税務署は脱税を発見する機会と見なし、最後には誤ったコンサルティングを聞いた投資家自身に違法を行った罪として、処罰が降りかかってくることになります。オフショア区域内では源泉徴収されないからと言っても、居住民に対して課税をする日本のような国の住民であれば、個人が自国での納税義務がなくなるということはないのです。アメリカ、ヨーロッパ、香港などに口座を保有することは、違法でも悪いことでもありません。問題なのは、海外口座や投資から得た利息や利益について税務署に報告をしないことなのです。投資資金を運用会社に送る前に、まず先にオフショア銀行の口座に送金し、文書足跡を少なくすれば、税務署は発見できないだろうという考えは、実に安直な考えだと言えるでしょう。

オフショア銀行に口座を開設する本当のメリットとは、保有資産を分散するという観点から日本国外に資産を保有する一手段であるという点です。世界中どこにいてもご自分のご資産にアクセスできるという利便性や、高い守秘性や安全性を保てるという点もまたメリットとして挙げられます。オフショア銀行は、日本国内の銀行で外貨を保有するよりも、高い利率を提供しています。オフショア銀行は、英語が使える方にとっては、とても使い勝手が良いものです。

インターネットバンキング、Eメール、FAXバンキング、テレフォンバンキングといった便利なサービスを受けることができる上、地元の銀行口座からお金を引き出すときと同じように、ATMから預金を引き出すことができます。電子送金を使用することにより、簡単で、迅速に世界中にお金を移動させることができ、世界中どこにいてもお持ちの銀行口座から直接資金を利用することができるのです。もし、旅行を頻繁にされる方でしたら、世界中どこにいても、ご自身の銀行口座に直接アクセスすることができるので、オフショア銀行口座は非常に便利なものとなるでしょう。

オフショア銀行で問題となる言葉の壁

しかし、オフショア銀行は、英語が使える方にとっては、使い勝手が良いものですが、残念ながら日本語での対応を行っているオフショア銀行はあまりありません。投資目的でオフショア銀行を開設することは、いかがなものでしょうか。もちろん、日本語で銀行業務のサービスを行っている銀行もありますが、今現在私が確認できているところでは、投資商品の説明を日本語で行っているオフショア銀行(プライベートバンクは除く)は皆無です。

国際投資で資産を増やそうと考える多くの日本のご投資家にとって、コミュニケーションをとるために必要な英語力が大きな壁になると思います。残念ながら、世界共通語は日本語ではなく、英語だということは否めません。銀行口座は第三者(フィナンシャル・コンサルタントも含む)へ口座情報を開示することはできません。せっかく海外で銀行口座を開設したけれども、活用できないというケースを多々見受けます。結局、投資に必要なのは、銀行口座ではなく投資用の口座なのです。

投資目的ならばカストディ口座が有意義

前回お話させていただいたように、プライベートバンクやポートフォリオ・アカウント、ラップ口座といったカストディ口座を用いて投資をする方が、より有意義でしょう。カストディ口座を通して、株式、債券、ミューチュアルファンド、ヘッジファンドやオルタナティブ投資をより有効的に国際的に行い、資産を増やし、必要時にそのカストディ口座より直接、日本の銀行口座に送金を行えば良いのです。

最後に、特筆すべき重要な点としては、バハマ、バミューダ、ケイマン諸島、香港、シンガポール、スイスといった有名なオフショア地域は、極めて安全な投資環境を提供しているということです。事実、世界の半分以上の資産と投資がオフショア金融センターで行われており、多くの有名企業が投資チャンスを求めてオフショアに集まってきています。

もちろん、投資ごとにご自身で常識的に判断し、評判の良い運用会社の商品を選択することは、重要ですが、国際投資に特化した経験豊かなフィナンシャル・コンサルタント、会計士、弁護士などに相談することも有効的な資産運用を行うための一つの手段です。

最近、ヘッジファンド業界の話題が新聞紙面をよく飾っています。海外のヘッジファンドに投資をするために、オフショア銀行口座を開設しようと考える方も多かったのではないでしょうか。次回は、ヘッジファンドについてお話していきましょう。