中長期的に考えた通貨分散の重要性

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私たちは日本に居住し、日本円で日々の買い物をし、日本円中心に生活を送っているために、自然と日本円を基軸に物事を捉えがちです。しかし、グローバルな経済社会において、世界の基軸通貨は日本円ではなく、日本も例外なく他国の経済に依存しています。  資産の全てを日本円で保有するということは、リスクにもなりえます。例えば、日本円が下落し、主要通貨に対し仮に20%円安になったとしたらどうなるでしょうか。世界経済の中で、日本円の購買力が20%下落してしまう事になります。食料をはじめ、生活必需品の輸入依存が高い日本においては、海外からの輸入品価格が円価で20%上昇します。円の購買力が低下することにより、海外旅行へ行っても20%多く費用がかさむことになります。
つまり、現代社会では、他国の通貨に関しても、より注意を払っていく必要性が求められているのです。
前回、ポートフォリオ内での資産配分の重要性についてお話しました。他通貨を保有することも、同様に、相関性を低くし、分散効果をもたらします。通貨分散は、バランスの良いポートフォリオ作成に不可欠です。
ポートフォリオに外貨資産を組み入れるときには、為替リスクを考慮し、中長期的に捉える必要があります。円高に推移することで、トータル資産が円換算すると目減りするからです。外貨建て資産の運用において年間10%のリターンが上がっても、その通貨が同時に円に対して10%下落した場合、運用収益は円換算で全て吸収されてしまいます。しかし、5年~10年といった中長期で考えた場合、日本円の価値が50~100%と大きく円高に推移することは考えにくいことですので、為替リスクは投資運用期間の長さに応じて軽減されるといってよいでしょう。
私が執筆をしている時点では、1米ドル=100円あたりを推移しています。今後、数年の内に、同レートは120円位に下落するポイントがまた来るでしょう。実際、私が初来日して以来、米ドル-日本円の為替相場は、幾度も1ドル100円から120円の間で上下変動を繰り返してきたからです。

効果的運用をするには投資先の通貨で投資を

外国為替市場は波のように動きますから、自分の資産価値が上下しないよう、主要外国通貨のように安定した資産を保有することは、バランスのとれたポートフォリオを作成するために重要です。外貨建て資産をポートフォリオに加える一般的な方法としては、外国債券や外貨建てのミューチュアル・ファンドへ投資することでしょう。
では、外国に投資する円建てのファンドへ投資するというのはどうでしょうか。米国、欧州、またはアジア株へ投資する円建てファンドが、日本の証券会社からたくさん販売されています。ファンドは円建てであっても、実際にファンドが市場で投資をするときには、米国株を買うときには米ドルが、欧州や英国株を買うときにはユーロや英ポンドが必然的に求められます。つまり、外国へ投資する運用商品は、実際には、その外貨での投資配分を持つようになるのです。
円建てで外国へ投資する運用商品の場合、もし、円がこれらの国の通貨よりも強くなると、ファンドのパフォーマンスは落ちてしまいます。逆に言えば、円が弱くなると、その運用商品から得られる利益は拡大します。
実質的な運用商品のパフォーマンスを享受するには、その投資先へ投資する際に必要になる通貨で投資をする方が、効率的といえます。
外国人投資家にとって、これまで、為替リスクは第一の懸念事項ではありませんが、考慮すべき副次的なリスクでした。外国会計の慣習や政情が、国際投資をする上での主要リスクとして考えられてきました。ドルに対する信用が低下する一方、他の経済圏が急速に成長し、世界経済資本に占める割合が拡大する現在では、国際分散投資ポートフォリオ作成において、通貨分散は鍵となるようになるかもしれません。

過去の外国為替相場から為替変動範囲を想定して投資

では、いったいどのくらい外国通貨へ配分をすれば良いのでしょうか。それは、その資金を自国通貨で使用するようになるかもしれない時期までの期間と、投資しようとしている時点での経済状況の二点によって決まります。
国際投資の現状を見ると、ミューチュアル・ファンドやヘッジファンド、コモディティファンドなど投資商品の約7割が米ドル建てです。特に、オイルや金などほとんどのコモディティが米ドルで価格設定され、世界中で取引されています。では、ポートフォリオにおける7割を米ドル建て資産で保有すれば適切なのでしょうか。ここで問題になるのは、どこで利益を得ようとしているのか、海外投資の場合、短期間での海外投資は為替リスクを増大させるため、投資期間が見合っているかどうかという点です。中長期的な視点で投資を考えるならば、為替相場は、循環し、戻ってくるため、為替リスクは軽減します。例えば、日本円は、米ドルに対し、ほぼ90円から120円の間で過去20年間動いています。この期間に7回も上がったり下がったり変動を繰りかえしています。過去の外国為替相場から、私たちは為替変動範囲が想定できるのです。
米ドルの下落リスクを避けるためには、ポートフォリオ内の通貨を分散して保有する必要があります。豪ドルや加ドル、ユーロ、英国ポンド、スイスフランは米ドルに対して著しく強くなっており、米ドルだけのポートフォリオは、ここ数年間でこれらの通貨に対して30%ほど目減りしています。しかし、更に重要なことは、外国為替相場の歴史的なサイクルを考慮することです。ある通貨を歴史的な高値で買ってしまうと、数年のうちに下落していくのを見守るしかなくなってしまいます。
様々な通貨や資産を保有することでのメリットもありますが、米ドルを保有し続けることで、下落する米ドルから利益を得ることもあります。コモディティを対象とした運用商品やファンドが例として挙げえられます。米ドルの下落によって、オイルや金が最高値を更新しました。米国に対する悲観的な見通しが、コモディティ価格上昇をさらに後押しし、インフレを加速させ、歴史的な高値を演出しました。ヘッジファンドの多くが良いポジションをとり、利益を生み出し、また米ドル下落の中、米ドルを空売りすることでも大きな利益を得ました。
つまり、米ドルのように過小評価され、売られすぎている外貨から順に組み込み、通貨分散を図ることは、バランスの良いポートフォリオを作成する上で理に適っていると言えるでしょう。しかし、英国ポンド、ユーロ、豪ドルのように歴史的な高値にある外貨を、今日の投資環境下で、あえて新たにポートフォリオへ加えることは、かえってリスクを増大させてしまうことになってしまうのではないかと、私は危惧します。
次回は、このような不安定な市場下でも、緩やかな上層曲線を描くようなファンドについてお話していきたいと思います。