市場動乱期の冷静な対応が巨万の富を築く

これまでに株式やミューチュアル・ファンドへ投資してきた経験をお持ちの方ならば、市場に対して不安感を抱かれたことが少なくとも1度はあったのではないでしょうか。市場に対する不安感とは、自分の投資商品の価格が回復するだろうかと心配し、やきもきすることです。市場が先行き不透明になり、過去の市場低迷期や金融危機が引き合いに出されるようになると、これまで市場は必ず回復してきたけれども、今回は以前とは異なり、回復しないかもしれないと考え始めます。もっと価格が下がる前に残った投資商品を売却すべきか、他の資産に影響を及ぼしたらどうするべきか、と不安になります。
執筆中の現時点では、私が保有している円資産は、下落している他通貨と比べ堅調で、母国通貨(カナダドル)も比較的高く評価されています。今は、全ての資産を売却して、キャッシュポジションにしておく時期なのでしょうか?そして、世間で騒がれているような、金融システムの終焉が訪れるのでしょうか?
私は、どちらの意見にも懐疑的です。これまでの歴史を通じ、私達は、下落しては回復し、前回の最高値を越えてまた成長していくという市場サイクルを何度も目撃してきました。世界的なパニックや戦争、テロなどが発生する度に、市場や経済が回復するか疑問視する声が投資家から上がってきましたが、過去を振り返ってみると、いつも数年で見事な回復を遂げています。問題は、その回復が数年かかるものなのか、もしくはもっと早い段階で訪れるのかということです。歴史はおかしなもので、繰り返します。過去は、未来を教えてはくれませんが、過去を学ぶことで、将来どうなるか、人間の行動から少なくとも何パターンか予測を立てることができるでしょう。結局、市場は、人間の行動によって動かされているのです。これは、投資における重要な根本的部分です。プロの投資家の多くは、市場と人間の行動心理の歴史とトレンドをよく学び、市場混乱期に感情的になるのではなく、冷静に対処することで巨万の富を築き上げてきました。

投資と売却のタイミングは投資目標と目的で判断

いつ投資して、市場からいつ抜け出せば良いか、正確なタイミングは誰にもわかりません。最善の方法は、投資目標と目的が中長期5年以上と十分長いならば、むやみに売買を繰り返さないことです。市場が下落したというニュースを聞き、売却するのではなく、市場に投資し続けることです。3日後には、評価額が20%上昇していたというということもありえますから、将来的な成長が見込まれる産業への投資を前提とした場合は、単純に投資し続け、市場が下落したときには再投資をすることが最良の方法と言えます。
では、市場から撤退すべきタイミングはどの段階でしょうか。現在の市場状況を例にとれば、そのタイミングは主要株式指標が3分の1以上下落する前の、一年以上前であったと言えます。この機会を逃した方は、今、売却すると、大きな損失を確定してしまうことになります。間違った時期に市場から資金を引き上げるもう一つの問題点は、高いインフレ率に関連します。控えめに見積もってもインフレ率は4%に上り、現金で保有することによる購買力低下が危惧されます。以前お話したように、日本では最近まで比較的緩やかにインフレが進行してきましたが、島国で輸入依存度が高いこともあり、インフレ率が加速すると、物を購入するのにより多くの円が必要になってしまいます。
また、一度市場から引き上げたら、どのタイミングで市場に戻れば良いのでしょうか。

長期投資がリスクを軽減させる

1963年から2004年まで米国株式インデックスは、年平均10.84%上昇してきました。この41年間で最高の上昇率を記録した90日間に投資しそびれた人は、年平均リターンが3.2%下落しています。投資運用日数としては、1% 以下に該当するこの90日間で、96%のリターンが生まれたのです。1992年から2007年までの米国、英国株式市場で、最高の上昇率を記録した10日間に投資しそびれた人は、利益を33%減少させています。そして、最高の上昇率を記録した40日間に投資しそびれた人では、パフォーマンスを90%も減少させているのです。いつ投資していつ売却するかマーケットタイミングを計ることは、リスクを最小限にするどころか、反ってリスクを高めてしまうことになりかねません。もっとも、最悪の時期を避けることができれば、より高いリターンを得ることができますが、未来を見通す水晶玉や予知能力もないので、不可能です。私達は、マーケットタイミングを確実に捉えることはできません。投資する際には、タイミング以上に、時間が、資産と資産クラスの分散と同様に重要な鍵を握ります。
市場が大きく下落しているときに再投資することで、包括的なリターンを飛躍的に上昇させることができます。以前投資したときよりも安いコストで更に投資することで、ドルコスト平均法が活き、ポートフォリオ全体のパフォーマンスを倍増させます。
例えば、あるファンドに100,000米ドル投資したとします。一口辺りの価格は、10米ドルだったので、10,000口買い付けることができました。市場状況によって、ファンド価格が下落したとしても、長期的な成長性が見込める場合の追加投資は理に適っています。ファンドの一口辺りの価格が5米ドルに下がったとしましょう。100,000米ドル追加して、また口数を購入すると、今度は20,000口買い付けることができ、合計30,000口保有することになりました。投資金額は、合計で200,000米ドルです。一年後にファンド価格が元の10米ドルに戻ったとしましょう。保有する口数は30,000口ですから、300,000米ドルの価値になりました。市場が下落したときに、追加投資をしなければ、この時点で利益を出すことはできませんでした。また、市場が下落せず、一時的な損失も出さず、当初のファンド価格を保っていたならば、投資資金を増やすまでに、もっと長い時間待たなくてはなりませんでした。

早期ビジョン、プランなくして成功はありえない

確かに言うのは簡単ですが、周囲の友人やメディアが皆、市場状況がいかに悪く、まだ投資を始める時期ではないと言っている間に、どのように追加投資していくかが非常に重要なのです。弱気になったときには、当初のプランに立ち返ってください。教育資金、住宅購入資金、退職後の生活資金作成など、長期的な性質の特定の目的や、中長期的に資産形成をしていきたいという希望だったならば、長期的な視野で判断することです。潜在的な成長性がある限り、その資金は将来のためのものですから、現在、投資している投資商品の時価は問題ではありません。また、分散投資のルールに従うならば、”Don’t put all your eggs in one basket” 全ての卵を一つのバスケットへ入れないこと(全ての資産を一つのものへ投資しないこと)です。プランに沿っている限り、心配する必要はありません。何らかの理由をつけ、途中でプランを変更してしまう人が、結局、最後に損失を出してしまうのです。
さあ、まず口座を開設し、資金を入金し、投資に備えておきましょう。口座開設手続きをした日に投資を開始できるのではなく、実際に口座が開設されるまでには、数週間かかります。準備を整えている間に、市場は大きく変化し、投資機会を逃してしまうことも十分ありえます。いつも私がご投資家に述べていることですが、将来に対するビジョン、プランがない人は、未来に踊らされてしまいます。プランを実行できない人が、結局、失敗してしまうのです。皆さんは、くれぐれも、この罠に自ら足を踏み入れないで下さい。