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ヘッジファンドは、しばしばリスクが高く、危険で、しかも限られた富裕層のみを対象にしていると いう烙印をメディアに押されがちです。初めてヘッジファンドが世の中に登場した時は、おそらく  その通りだったかもしれませんが、現在では様変わりしています。ヘッジファンドより以前に    ミューチュアルファンドが登場した当時も、同じように認識されていました。ミューチュアルファンドが登場する1930年以前は、株式や債券を組み入れたポートフォリオ作成するには、多額の資金を 必要としていたため、ポートフォリオ運用は、「富裕層のゲーム」として捉えられていました。   しかし、ミューチュアルファンドの登場により、多くの投資家から投資資金を集め、まとめたお金を 一つのファンドとして、分散投資がすることが可能になりました。現在では、誰もが少額から簡単に 分散投資が行えます。
通常、ミューチュアルファンドは、ある一定のエリアや単一の投資内で頻繁に売買することを制限する厳しい規制があります。例えば、ファンド・マネージャーが翌日にマーケットが落ちることを察知しても、ファンド全体の5%までしか現金化することしかできず、他の投資資産の価格下落を見守るしか ありません。反対に、ある特定の会社の株価が急成長し2倍になる機会を察知しても、その株式に  ファンド資産の5%しか投資することができないのです。
また、一般的に、ミューチュアルファンドは、投資の情報公開が求められますし、ショート、レバレッジ、一極集中投資、デリバティブなどの手法を用いることを禁じられています。つまり、ミューチュアルファンドは、利益を上げる可能性を規制により制限される一方で、ファンド・マネージャーの誤った判断による運用リスクを低減することも可能なのです。

ローリスクからハイリスクまで揃う

一方、ヘッジファンドは、ミューチュアルファンドより柔軟性に富んだ運用手法が用いられているので、ショートポジションを取ることもできますし、先物、ワラント、オプションといった金融デリバティブも用いることができます。従って、ヘッジファンドは、より利益を生み出す機会に恵まれ、どんなマーケット状況でも利益を出すことを可能にしているのです。最近では、ローリスクのものから   投機性の高いハイリスクものまで、様々なヘッジファンドがあります。ファンド・マネージャーが  一つの株式や、コモディティ、債券、通貨トレードに集中的にファンド資産の大部分を投資するような非常に積極的なファンドがある一方で、ローリスクのヘッジファンド・マネージャーは、厳しい規制の下、ファンドが適正にリスクヘッジされているか入念に管理しながら運用しています。前者のような ハイリスクのヘッジファンドが、まさにメディアが警告するタイプのヘッジファンドであり、一晩で 時価が半分になってしまうこともあるので、心臓の弱い方にはお勧めできないファンドです。一般的に好まれるのは、月平均1%近くの上昇リターンで、下落月でも0.2%程度しか下落しないというような ヘッジファンドです。マイナス運用で取引を終える月数が少なく、継続的に上昇するファンドが   理想的ではないでしょうか。このようなパフォーマンスが継続し、年平均利回り10%超で複利運用が 行えれば、7年程で投資元本が倍になるのです。

リスクを理解し、最小限にするのが重要

1990年代には、全世界でわずか数百社、運用総額2~3000億円程度であったヘッジファンド業界が、現在では1万を超える運用会社が数百兆円を運用するまでに、ヘッジファンド業界は急成長しました。それに伴い、ファンド会社が倫理に反する非合法的な市場操作を行わないように監視する体制  機関投資家、個人投資家に対し、リスク情報公開をするなどの規制が強化されてきました。このようなリスク情報公開は、非常に好ましいことだと思います。特に、個人投資家にとっては、状況が悪化した時に全ての投資が総崩れしないよう、リスクを考慮し理解を深めるために重要だからです。人生において、リスクは常に存在します。だからこそ、そのリスクを理解することが、リスクを管理し最小限に 抑えることに繋がるのです。
また、ヘッジファンドの高いパフォーマンスは、投資の柔軟性に加え、パフォーマンスに応じた   ファンド・マネージャーへのインセンティブ(成功報酬)にも由来しています。大半のミューチュアルファンド・マネージャーと異なり、ヘッジファンド・マネージャーは、通常、そのファンドに影響力を及ぼすほどの多額の自己資金を投資し、投資家とリスクを共有しながら運用して、報酬を得ます。ミューチュアルファンドが、パフォーマンスによってではなく、運用資産額に応じてファンド・マネージャーに報酬を支払うのに対し、「インセンティブ・フィー」は、利益が上がったときにだけ、ヘッジファンド・マネージャーを報いるために支払われるのです。パフォーマンスに重点を置いたインセンティブ・フィーの構造は、ウォール街の多くのトップ・プレーヤーを魅了し、金融業界のエリート達を続々とヘッジファンド業界へ送り出してきました。 全てではありませんが、ほとんどのヘッジファンドが、マーケット下落時に対するリスクヘッジをする戦略をとった運用を行っています。ヘッジファンドの 手法は以下のような種類に分類されます。

ロング・ショート

ヘッジファンドの手法の中で最も多く使われている手法です。株式を買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)の両方のポジションを取ります。株価がその企業の業績を反映せずに高騰していると判断した場合、その株式についてはショート(売り持ち)のポジションを取ります。反対に、その株式が企業の業績と比べ、過小評価されていると判断した場合、その銘柄については買い持ち(ロング)の  ポジションを取ります。

裁定取引(アービトラージ)

同一の銘柄が、複数のマーケットで取引されている場合、同じ銘柄であったとしても、価格にズレが 生じることがあります。このような場合、最終的には必ず価格のズレが修正されるため、高いほうを 売って、安いほうを買っておき、価格が修正された時点で反対売買を行うことで、ある意味リスク  フリーで確実に利益を出すことができます。

イベント・ドリブン

この手法は、主に企業の買収・合併や社長交代等の「イベント」を利用して利益を上げる運用スタイルです。例えば、企業の買収・合併のイベントが発表されてから、実際にディールが成立するまでの間の株価の収斂を利用して利益を上げる機会が生まれます。しかしながら、ディールが不成立に終わった 場合は、多額の損失につながる場合もあります。

グローバル・マクロ

グローバル・マクロは運用手法を指すものではなく、世界中の市場において、ありとあらゆる商品を あらゆる手法を用いて運用するスタイルのことを指します。その多くは世界経済の変化、歪みから利益を得るために多種多様のポジションを取っています。典型的な例としては、金利変動による為替、株式、債券市場への影響を及ぼす政府政策の変更などに着目して、利益を上げる運用スタイルです。この手法を用いて、ジョージ・ソロス率いるクォンタム・ファンドが、1992年に英国中央銀行を打ち負かして莫大な利益を上げた事は有名です。

マーケット・ニュートラル

この手法はマーケットの価格変動からポートフォリオを保護するために、ほぼ同額のショートとロングのポジションを取ります。割安と判断した株式をロング、割高と判断した株式をショートして、割安と割高の状態が解消される過程で収益を狙います。

ディストレスト

経営環境が悪化して倒産に直面している会社、または破綻した会社の証券を投資対象とする戦略です。

ローリスクで変動率低い

ヘッジファンドは全て変動率が高いと、誤解されていらっしゃる方をよく拝見します。もし、グローバル・マクロ・ストラテジーをとり、レバレッジをたくさんかけながら、多額の資金を市場の一定向に賭け、株式、為替、債券、商品、金などに投資したとすると、確かに変動率は非常に高くなります。しかし、現実にはグローバル・マクロを用いたファンドはヘッジファンド全体の5%以下です。大半のヘッジファンドが、ヘッジのためにだけにデリバティブを使うか、全く使用していないかですし、レバレッジをかけていないファンドも多いのが現状です。
ほとんどのヘッジファンドのストラテジーが、特にレラティブ・バリュー・ストラテジーの場合は  一般的に100%マーケットリスクにさらされているミューチュアルファンドや伝統的な株式投資と 異なり、債券や株式市場の変動にあまり左右されません。
一定期間を超えるヘッジファンド投資のリターンは、株式よりも低い変動率、ローリスクの上、通常の株式や債券のインデックスより上回ります。ヘッジファンドへの投資は、スイスのプライベートバンクを始め、見識のある投資家に好まれています。今では、世界中の年金基金の多くが、ヘッジファンドへ投資しています。
次回は、欧米では一般的な運用商品でありながら、日本人投資家には馴染みが薄いランドバンキングについてお話していきましょう。